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「ほらね、早くしないと取られちゃうわ」
そう言っていちこさんは意地悪に笑った。
ソワソワしていると、千裕はすぐに戻ってきた。
「千裕さん、学園祭誘われたんですか?」
森田少年、ナイス!
「えぇ、まぁね」
や、やっぱり……
「で、どうしたんですか?」
「もちろん、断ったわ」
ホッ、としたのも束の間。
「え、なんでですか?」
「だってもう、決まってるの。一緒に過ごす人」
ズキン、って胸が痛くなる。
あぁ、そうなんや。
千裕にはもう相手が……
瑞穂ちゃんかな……?
私はフラフラしながら立ち上がった。
「まひる、どこ行くんや?」
「トイレ……」
兄ちゃんの問いに答えると、私は生徒会室を出た。
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トイレどこやっけ……
あぁ、もうあかん。
何も考えられへん……
その時。
「まひる?」
パッと前を見ると、空き教室のドアのところに会長がいた。
「こんなところで何してるんだ?」
「私は、トイレに…。会長は…」
と言ったところで、口を閉じる。
会長のいる教室は、女の子でいっぱいだったから。
*
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