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「なぁ、兄ちゃん」
「なに?」
持ってたコーヒーを置いて、兄ちゃんはニコッと笑った。
「兄ちゃんは、前から会長と千裕を知ってるやんな?」
「ん?まぁ……ってまひる、もしかして!アイツらの毒牙にかかったんかぁ!?」
「うるさい」
「あ、ごめん」
私は一つため息をついて、心を落ち着けた。
「もし、私が好きになるなら、どっちのほうが許せる?」
「どっちも許さん」
「もう、兄ちゃん!」
「んー、だってどっちも嫌やもん。大切なまひるがアイツらに……」
兄ちゃんは想像するだけで嫌やったらしく、おえって吐きそうな顔をした。
「そっか……」
「でも。本当にどうしても、って言うなら。」
兄ちゃんがまっすぐ私を見る。
私は思わずゴクリと唾をのんでしまった。
「雪哉、かな……」
やっぱり会長、か。
なんで千裕はあかんのかな……
「アイツら、あぁ見えてもいろいろ背負ってるから。千裕を好きになったら、苦しいと思う」
兄ちゃんは、切なく笑った。
『幸せになって』と言った時の、いちこさんと同じ瞳。
兄ちゃんは、気づいてる?
私の気持ちに……
「頑張れよ」
そう言って兄ちゃんは私の頭をポンッと触った。
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