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16


その時。


「千裕、ごめん。交代して」


兄ちゃんの声が聞こえた


「まひる、大丈夫か?」


柳瀬千裕の問いにゆっくり頷くと、柳瀬千裕は私を離した。



「いちこちゃん、先に戻ってよう」


「あ、うん…」


柳瀬千裕といちこさんの足音が、次第に遠ざかっていった。


「兄ちゃん、ごめん」


「なんでお前が謝るんや……」


兄ちゃんは苦笑して、ギュッと私を抱きしめた。




************


「ねぇ、千裕?」


「なぁに?」


「どうしてあそこにいたの?」


いちこちゃんと2人で生徒会室に向かっていると、いちこちゃんが聞いてきた。


「2人で、あなたと将行ちゃんを探しに行ったのよ」


「そう………」


心配そうに俯くいちこちゃんに、俺は微笑んだ。


「大丈夫よ。将行ちゃんが何とかするわ」


「そうねっ」


いちこちゃんはやっと笑った。



「ところで。ねぇ、千裕」


「どうしたの?」


「私、千裕の男言葉初めて聞いた」


「男言葉?そんなの喋ったかしら?」


「え?無意識?」


ほんとに記憶にないな……


「ちょっとだけ、素敵だったよ」


「ちょっとだけってどういう意味よ!」


「エヘヘ…」


男言葉、か……


無意識に出るなんて初めての経験。


だけど、俺は………っ


俺は静かに、拳を握った………



*

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