16
その時。
「千裕、ごめん。交代して」
兄ちゃんの声が聞こえた
「まひる、大丈夫か?」
柳瀬千裕の問いにゆっくり頷くと、柳瀬千裕は私を離した。
「いちこちゃん、先に戻ってよう」
「あ、うん…」
柳瀬千裕といちこさんの足音が、次第に遠ざかっていった。
「兄ちゃん、ごめん」
「なんでお前が謝るんや……」
兄ちゃんは苦笑して、ギュッと私を抱きしめた。
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「ねぇ、千裕?」
「なぁに?」
「どうしてあそこにいたの?」
いちこちゃんと2人で生徒会室に向かっていると、いちこちゃんが聞いてきた。
「2人で、あなたと将行ちゃんを探しに行ったのよ」
「そう………」
心配そうに俯くいちこちゃんに、俺は微笑んだ。
「大丈夫よ。将行ちゃんが何とかするわ」
「そうねっ」
いちこちゃんはやっと笑った。
「ところで。ねぇ、千裕」
「どうしたの?」
「私、千裕の男言葉初めて聞いた」
「男言葉?そんなの喋ったかしら?」
「え?無意識?」
ほんとに記憶にないな……
「ちょっとだけ、素敵だったよ」
「ちょっとだけってどういう意味よ!」
「エヘヘ…」
男言葉、か……
無意識に出るなんて初めての経験。
だけど、俺は………っ
俺は静かに、拳を握った………
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