[携帯モード] [URL送信]
15


走って走って


自分が今どこにいるのかもわからんくて


周りはやけに静か。


ただ、自分の荒い呼吸しか聞こえなかった。


その時。


私だけの世界に、音ができた。


「まひる!」


誰かの、声。


手を掴まれたと思うと、すぐ横の空き教室に入れられて、ギュッと抱きしめられた。


「まひる……」


「千、裕……」


それが柳瀬千裕やと認識した瞬間、取り戻す






温もり

感情


やっと涙が、溢れてきた。


「ち、千裕……」


「一人で逃げんな。逃げたい時は俺が一緒に逃げてやるから……」


柳瀬千裕の荒い呼吸


言葉


心臓の音


全部が、私の心を溶かしていく……



「ショックだった?」


「うん……親じゃないってこともやけど、一番ショックなんは、私のせいで兄ちゃんといちこさんが……」


「まひる、バカだな……」


柳瀬千裕は少し笑った気がした。


「こんな時ぐらい、自分のこと考えろ…」


「う、うぅ……」


柳瀬千裕の腕の中は、妙に心地よかった。



*

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!