13
ここは裏庭。
校舎と体育館の間にあって、あまり人が通らない。
告白とかによく使われる場所。
いちこさんはこっちを向いて座ってて、兄ちゃんはいちこさんと向かい合って座ってる。
つまり、私たちに背を向けて。
私が声をかけようと歩き出した時
「待って」
と柳瀬千裕に手を引っ張られた。
「ほんまにごめん!いちこ!」
兄ちゃんがいちこさんに頭を下げる。
いちこさんは俯いたまま何も言わない。
「いい加減なんか言ってくれ。殴ってもええから…」
「殴れるわけ、ない」
「え……?」
「殴れるわけないじゃない、好きなのに!」
いちこさんは泣いていた。
「いちこ……」
「わかってる。昨日ラブホまで行ったのに、何もしてくれなかった。片思いだってことはわかってるから!」
「いや、あの、昨日はほんまに酔っとって……」
「まひるちゃんの名前、ずっと呟いてた」
……え?
私?
女の人とホテル行ったのに、いくら妹でも他の女の名前呼ぶなんて最低や!
そう思ってズンズン歩き出そうとすると、また柳瀬千裕に止められた。
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