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「みんな、あたしの顔だけ見て寄ってくる。話し方なんかで引くようじゃ、愛が足りないわ」
そう言って、柳瀬千裕はフッと笑った。
その顔が綺麗すぎて少し見とれる。
「まひるは?」
「え?」
「どうしてこっちに来たの?」
「あぁ……」
少し、迷う私。
だけど、この人になら言っても大丈夫かな……
「親の仲が悪くて。逃げてきた」
そう言って無理に笑うと、柳瀬千裕の瞳が思った以上に優しくて、
無理に笑った自分が恥ずかしくなった。
「兄ちゃんがいる頃はみんな仲良かったのに。兄ちゃんがこっちに来てから……。私のせいなんかも」
怖かった
兄ちゃんがいなくなってから、日に日に悪くなる両親の仲。
私が起きてる時は一言も話さへんのに、私が布団に入った途端に口論を始める。
私じゃなくて兄ちゃんが家に残ってたら、うまく行ってたんかな……
そう思わへん日はなかった。
「まひる…」
柳瀬千裕は私の手を握った。
「あなたのせいじゃないわ」
なんでやろ……
柳瀬千裕に言われると安心する。
手が、意外と大きいから?
それとも……
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