8
「ありがと」
柳瀬千裕からココアを受け取ると、暖かさが染み渡る。
「はぁ……」
一つため息をつくと、隣の柳瀬千裕を見てみる。
ほんまに、憎たらしいほどいい男……
「あら、どうかした?」
その口調さえなかったらな。
「柳瀬千裕は、なんでそんな口調なん?」
「んー?なんでだろうね。気づいたらこうなってたのよ」
「男の人が好きなん?」
「まさか。あたしは女の子が大好きよ」
「ふーん、なんか不思議」
そう?と微笑む柳瀬千裕は、すっごくカッコいいのに。
「柳瀬千裕はモテる?」
「あーら、気になるの?」
グッと顔を近づけてくる柳瀬千裕。
か、顔だけはカッコいいんやからあんた……
「ふふふ、顔真っ赤。」
「う、うっさい!」
私がそう言って、柳瀬千裕の肩を押すと、柳瀬千裕は意外と簡単に離れた。
「初めはモテるわ。だけど、この話し方を聞くと、みんな引いていくの」
柳瀬千裕は一口コーヒーを飲んだ。
コクリ、と喉が動く。
「直そうって、思わへんの?」
「うん。だって直す意味ないじゃない。」
柳瀬千裕の私を見る瞳は、なぜか暖かかった。
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