5
「お兄様がお見えよ?」
……なんか、周りの人がみんな教室の入り口のほう見てると思った。
「ありがとう」
結子ちゃんにそう言うと、私は席を立った。
そして、兄ちゃんの前に立つと、兄ちゃんは泣きそうな顔で謝ってきた。
「ごめん、まひる!」
「いや、別にいいけど……」
実は昨日、兄ちゃんは家に帰ってこなかった。
みんなでオールして遊んでんのかなぁって思って、気にもしてなかったんやけど。
「いちこちゃんとお泊まり?」
「え……?」
私のすぐ後ろで柳瀬千裕の声が聞こえたかと思うと、兄ちゃんが真っ青になった。
「ど、どういうこと?!」
柳瀬千裕に詰め寄ると、彼はニヤッと笑った。
「昨日ね、酔った将行ちゃんを、いちこちゃんが送って行ったのよ。それで家に帰らなかったってことは……ね?」
なぁるほどー……
私と柳瀬千裕は、真っ青になっている兄ちゃんをニヤニヤしながら見た。
すると兄ちゃんは顔を上げて
「余計なこと言うな、千裕」
そう言って去って行った。
「将行ちゃん、何か怒ってた…?」
「うん、私もそう思った……」
怒るようなこと、あったかな?
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