19 「……早速。アタシの忠告無視したでしょ」 いつのまに隣に来たのか、柳瀬千裕が低い声で言った。 声は低いのにオカマ口調やからなんか不思議。 「え?忠告?」 「アンタもう忘れたの?!会長に近付くなって言ったじゃない!ヒドイわね〜」 「あぁ、あれね……」 柳瀬千裕にいきなり『男』を見て戸惑った時か。 「なんでそこまで言うの?」 質問すると、柳瀬千裕はまた男の顔になる。 もう、この顔カッコよすぎて見惚れるからやめてほしいのにー!! 「知らないほうが、いいよ。………純粋なキミは」 「え?なんて?」 後半の言葉は、いちこさんの「二人とも早くー!」って言葉に掻き消されて聞こえなかった。 「んーん。なんでもないわ。ほら、急ぎましょ」 久しぶりのカラオケよー!なんて叫んでる柳瀬千裕に、さっきの男の顔は見えない。 ほんま、よくわからん人間やなぁ…… あ、そういえば。 結子ちゃんとアドレス交換して後でメール送ってって言われてたし送ろー。 がさごそ 鞄の中を漁る。 あれ? 「まひるちゃん、どうかした?」 「いや、あの携帯が……」 「あぁ、もしかして白い携帯ですか?生徒会室の机の上に置いてあったんですけど、会長のだと思ってました」 森田少年、それや! 「ちょっと取ってきます!先行っといてください!」 「え?あ、ちょっと……!」 いちこさんの声は聞こえた。 「だから、近付くなって……」 そんな柳瀬千裕の呟きは、私には聞こえなかったんだ…… * [*前へ][次へ#] |