13
「ほんと、すごいなあの人は」
千裕が、呆れたように笑う。
その顔に、あ、めんどくさくなったかな……って不安になる。
「……いや?」
「なにが?」
「もう、めんどくさくなった?」
俯いたまま、ボソボソ話す私には千裕の顔は見えなくて
あぁ、もう
私ってこんな弱かった?!
こんな女、千裕も好きじゃないやんな……って思った時
ふっと、千裕が笑った気がした。
「まひる」
「………」
答えない私の頬に、千裕の細長い指が触れる。
「まひる……」
優しすぎる指と声に、私は思わず顔を上げた。
そして
「………っ」
指や声と同じように優しい笑顔の千裕が、すぐ近くにいた。
「そんな方法があるなら教えてほしい」
「……っ」
「まひるを、嫌とかめんどくさいとか。そんな風に思ったら、こんなにまひるでいっぱいの情けない俺見られなくてすむ……」
嬉しすぎて泣きそうな私の顔に、千裕の綺麗な顔が近づいてくる。
そして、もうすぐ触れ合う……って瞬間。
「まひるー!」
兄ちゃんの甘甘な声と共に、足音が近づいてきた。
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