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「将行ちゃ…これ、おいしい……です…」
『将行ちゃん、これおいしいわ!』
と、言おうとした千裕に兄ちゃんの鋭すぎる視線が刺さる。
そのため、千裕の声は語尾に近づくにつれて小さくなった。
……たぶん、兄ちゃんは
千裕のオカマ口調の理由を知ってるから、私の前でオカマ口調で話すことを許せないんだと思う。
それを千裕もわかってるし、私に悪いとも思ってるから直そうと努力してくれてる。
その二人の気遣いが、私にはなぜか少しくすぐったかった。
私、たぶん兄ちゃんが思ってる以上に大丈夫やで?
「まさかお前、まひるに手出してないやろな?」
……ギク、とわかりやすすぎる反応をした私と千裕を見て、兄ちゃんは「殺してやる!」とキッチンに走り出す。
「ま、待って!」
包丁持ってくる気や!
私は兄ちゃんを止めるのに必死で、最悪の一言を口走ってしまった。
「さ、最後まではシてないし……!!」
自分の失言に気づいた時にはすでに遅し。
「さ、最後って…!どこまでシたんや千裕ー!」
兄ちゃんの鉄拳が、千裕の綺麗な顔に飛んでいた。
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