10
「おー、まひる。おかえり。寒くなかったか?」
いやいや、兄ちゃん
今夏やし。
むしろ、夕方やのになんでこんな暑いの!ってキレそうになるぐらいやし。
「電話したら兄ちゃん迎えに行ったのに」
「ううん……送ってくれたし!」
そこでやっと、兄ちゃんが私の後ろにいる千裕に目を向けた。
……だけど、それは一瞬で。
「今日の晩ご飯はお前の好きなシチューやからな」
確かに好きやけど、こんな真夏にシチュー?!
て、それは今はどうでもいい。
千裕をチラリと見ると、兄ちゃんの華麗なスルー攻撃に唖然としていた。
「せ、せっかく送ってくれたのに、そんな態度あかんよ!」
私が声を張ると、やっと兄ちゃんの動きが止まった。
……そして。
「入れ」
低い声で、千裕に向かって言う。
よかった!!
私は安堵して千裕を見る。
千裕も、嬉しそうに笑ってた。
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