ハルノヒザシ 9 「やーっと着いたー」 目的地の駅に着いた時、思わず俺はグーッと背筋を伸ばした。 途中何度も乗り換えながら四時間ちょい。 流石に疲れますよ。 夏は変な事をしてくるし。 「腹減ったー」 「もう?弁当食ったじゃん」 後ろをダラダラと歩きながら夏がぼやく。 「これから買い物行くんだろ。その前のラーメン食おうよ」 「まぁ、良いけど。切符持ってるか?大丈夫か」 「持ってますよ、ホラ」 そんな事を話しながら改札口を抜け、駅の外に出る。 あー、懐かしい。 目の前に広がるのはこの間まで日常だった風景。 一ヶ月で変わる訳がないが変わってない景色が妙に嬉しい。 「なー、早くラーメン食いに行こうぜ」 ちょっとした感傷に浸っていた俺の肩を引っ張りながら夏が言う。 この…、少しは懐かしいとか思わないなか?夏は…。 「ハイハイ、わかりましたよ。何時もの所だろ」 そう言いながら歩きだそうと顔を上げると 俺はある一点に目が釘付けになった。 駅のロータリーの端に原チャリを止めて、煙草をふかす、灰色のツナギ姿の男。 嘘だろ…? 電車の時間何か言ってないよ、俺。 何でいるんだ? 「喜介っ!!!」 思わず俺は叫びながら駆け出した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |