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ハルノヒザシ

(わ、こいつタトゥーいれてんじゃん)
風呂入っていいのかよ。
俺達と入れ違いになるように入ってきた3人組は、大学生くらいだろうか。
頭をおかしな色に染めどう見ても教養があるようには見えない奴等だった。
とっととと出て正解だったな。絡まれたらかなわない。
ぎゃあぎゃあとさっそく騒ぎ始める奴等の声を背中に聞きながら、俺はそんなことを思う。
と、その時「あ!!」と後ろから何かに気付いたような声を奴等の一人があげた。
瞬間、嫌な予感がする。


「見ろよ。あいつの背中。ちょーグロい」
「うわ、マジだ。キモっ!!」

下品な嘲笑。
先を歩いていた兄貴の背中が、ぴくんと微かに震えた。
俺は反射的に振り返る。
「てめえら…」
兄貴の痕をバカにする奴は何人たりとも許さねぇ。
これは…あの時…、兄貴が俺を守ってくれた証なのだから。
この痕と引き換えに、俺は今ここに立っていられるのだから。
俺の生ある限り、俺は許すわけにはいかない。
「ぶっ殺してやる…」
固く拳を握りしめ、俺は振り返った。
「やめな…夏」
すぐにそんな俺を咎める兄貴の声。
「でも…」
「いいから。ご飯食べに行こう」
兄貴に手を取られ、そのままひかれるように歩き出す。
「俺。ご飯楽しみにしてたんだ」
そう言って笑う兄貴は、いつも通りだった。何度も何度も何度も見た。その笑顔。

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