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ハルノヒザシ

「そんな、謝るってことは、前田嫌だった?」
ひたすら謝り続けていると、三好が少し首を傾げながらちょっと悲しそうに言った。
「お、俺はそんな…嫌とかそういう訳じゃなくて…。三好に悪かったなって思って…」
「ん…。俺平気だって。ちょっとびっくりしただけ。だからもう謝んないで」
そう言って三好はもう一度だけ自らの唇に指先で触れた。
形のよい、真っ赤な唇。
ぞっとするぐらい綺麗なこの人とあんなに近くに居たのが信じられない。
その動作は俺にさっきのことを強烈に思い出させて。
目が釘付けになってしまう。
綺麗…、キレイ…、きれい…。
心を奪われるというのは、こういうことなのだろうか。
目の前にいる人のことしか考えられなくて、頭がぼうっとなっていく。
身体にも力が入らなくなってきて、俺は脇にあった家庭科室のテーブルに身体を預けるようにして床に座り込んだ。
三好もにじりよってきて、隣で身体に腰を下ろす。
触れてないのに左の肩がなんだか熱くて、心臓がドキドキと早くなっていく。
俺、おかしい…。三好なのに。
いつもの三好に戻ってもらいたいけど、今の、三好と向き合うと、心臓が爆発しちゃいそう。
こんな姿、三好はさぞ変な目をして眺めているだろう…。
おそる、おそる、横の三好の顔を見ると、三好はプイッとそっぽを向いていた。
その頬を微かに紅く染めて。
「み…よし?」
俺が呼ぶと、ピクッと反応した後、三好もおそるおそると言った感じでこちらに顔を向けた。
やっぱり顔が紅い。
「あ…んま、意識させない…でよ」
こっちまで恥ずかしくなってきたじゃん。
睫毛の影を頬に落としながら、小さな声で言う三好。
かぁっと、俺の顔が再び真っ赤になる。
「だ、だ、だって…」
三好が綺麗過ぎて…。意識しちゃって。
「ふ、ふ…。そうか…。そりゃ残念だな」
俺、女だったら、前田こんなにメロメロに出来たのか。

俺の緊張をほぐすように、三好が頬を染めながら茶化して笑った顔も、やっぱり美しかった。


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あきゅろす。
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