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ハルノヒザシ

「おけーり」「おかえり」「おかえりー!前田ー!」
たっぷり榎本先輩の部屋に居てから、自室に戻ると。部屋には、二条と音羽が来ていた。
三好が色々あるものを引っ張り出して二人をもてなしたらしく、三人が囲むテーブルには、俺が冷凍しておいたスコーンやら、おもちやら、作りだめして置いた味付け卵やらが入っていた容器が散乱していた。部屋にあるすぐ食べられる食料はほとんど食べられてしまったらしい。まあいいけど。なにか他にすぐ作れそうなものはあったけ?
「ただいま。二人ともいらっしゃい。そろってどうしたの?」
「それがね、前田。今日雨降ってたじゃん。学校行っている間窓開けっぱなしにしといたらベッドが濡れちゃって乾かなくって今日寝るところがないんだよね」
「この阿保のせいで、俺まで寝るとこなくなってしもうたわ。談話室で寝よとしたら、今日は三年が使うとか言うし」
どっちか一人でいいし、床でいいから泊めてくれないとの話に、俺は頷く。
「それは大変だったね。いいよいいよ、二人で俺のベッドに寝れば。床じゃ寒いよ。俺三好と寝るから」
昔から夏と一緒に寝ることも多かったし俺にとっては自然なことなので、軽い気持ちで口に出してから、まず三好に了解を取るべきだったと気づいた。こないだは取らなかったけど。ああ、まずい。
「え!いいの?あはは、二条一緒に寝よう!」
「あー、そりゃ助かるけど、三好はええんか?俺たちのせいで窮屈な思いさせて。床でええよ?」
「いいよ。床に寝せる方が気になる。それに、せっかくだから、音羽も二条も一緒に前田の晩飯と朝飯食べようぜ」
「やったー!さっきのスコーンめっちゃうまかった!味付け卵は後10個ぐらいいけそう!」
「ん、口にあったようでよかった。じゃあ、今日はから揚げあげようかな!後カレー」
今ある材料で、男子高校生4人のおなかを満たすにはどうすればいいいか考えていた俺は、歓声を背中に受けつつさっそくエプロンをしめて準備にとりかかる。何も言わずとも三好が、隣にやってきて、お米をといで早炊きのタイマーをセットしてくれた。
「人参とジャガイモと玉ねぎ出してきて洗ってもらってもいい?」
「ん」
「俺もなんか手伝う!」「三好料理できるんか?」「…あんまり…」「野菜切るのは上手だよ」
男子高校生4人でワイワイ騒ぎながらの夕食作り。
音羽と二条もあんまり料理はしないらしく、俺がから揚げを揚げている間、後ろのテーブルで3人ワイワイ野菜の切り方教室で盛り上げっていた。もちろん教師は三好。緊張したのか手を切ってしまっていたけど。まだかかりそうなので、俺はデザートにヨーグルトムースを作ることにする。
「前田、お皿、これでいい?」
「うん。ありがとう」
「二人とも夫婦感やばいよ」
「流石はベスカプ取っただけあるわ」
カレー皿は三枚しかないので、三好が見つけてきたお皿に俺が頷いていると、後ろから二人の冷やかしの声。普段だったらこんなことには慣れているので気にしないが、今はちょっと顔が赤くなってしまって。カレーの鍋に夢中なふりして誤魔化した。三好は平気な顔してご飯をよそって、「こんくらいでいい?」と二人に聞いている。
(もう!榎本先輩が恋バナなんて言い出すから!)

椅子が足りないから、部屋の真ん中に段ボール置いて。
4人で周りを囲んでの夕食。俺の隣はいつだって三好。
元々狭い部屋に、今日は音羽や二条の荷物も置いてあるので、ますます男子高校生4人には狭すぎるぎゅうぎゅうの食卓だったが、いつもと違う雰囲気も楽しくて、いつもと違う距離も新鮮で。
俺は榎本先輩の所でパン食べてたし、他の三人は結構夕食前に色々食べてて、カレーとから揚げは少しくらい余るかな?なんて思っていたんだけど。ついつい賑やかな雰囲気が楽しくて。
俺も三好も二条も音羽も皆で仲良くおかわりして、カレーもお櫃も空っぽにしてしまったのだった。



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あきゅろす。
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