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ハルノヒザシ
校舎裏
衣替えも終わり、大分秋も深まってきたある日。
放課後の清掃活動後のゴミ出しじゃんけんに負けた俺は、一人校舎裏のゴミ置き場を訪れていた。
よいしょよいしょとゴミ袋をゴミの山に放り投げ、ついでに備え付けの箒で辺りを掃いておく。
木々はもうすっかり色づいていて、近くに植えてあるケヤキからは絶え間なく落ち葉が降ってきていた。
人気のない校舎裏。なんとなく開放的な気分になってしまった俺は、誰も見ていないのをいいことに、はらはら落ちてくる葉っぱを捕まえようと箒を動かす手を休めて左手を伸ばしてみるが、風があるからか、俺がどんくさいのか降り注ぐ木の葉は俺の手にかすりもしなくて。
少しだけむきになって葉っぱを追いかけまわしていると、ガサガサとゴミ置き場の後ろの繁みが揺れる音がした。
段々とこちらに近づいてくる音に、猫でもいるのかな、それとも狸だったりしてなんて考えながら、音の方を注視していると、勢いよく飛び出してくる影。

「あ」
「ああ!!」

猫にしては大きすぎる体に、狸にしては明るすぎる毛並み。
飛び出した勢いそのままに飛びついてくるその身体を、慌てて俺は箒を放りだして受け止める。
「くるみちゃん!」
「はるちゃん先輩ぃ!」
ぎゅうっと抱きついてくるくるみちゃんの身体を抱きしめ返すとふわりと甘い香りがした。いつもの、くるみちゃんの匂い。
「あはは!変なとこで会ったね!はるちゃん先輩!」
「なんかガサガサいってるから、狸かと思って見てたらくるみちゃんが出てきてびっくりしちゃった」
「狸だったらどーする?俺に化けてはるちゃん先輩を騙すんだよ!」
「狸だったらあ?狸可愛いから撫でてみたいな。こんな風に」
俺はふわふわのくるみちゃんの銀色の髪を撫でながら、くっついてる葉っぱや枝をとっていやる。
もう衣替えをしてから大分経っているから、くるみちゃんは中学生の制服である学ランを身にまとっていて。その中にはなんだかオシャレな紫色のパーカーを着ていた。
くるみちゃんのトレードマークであるたくさんのピアスは今日も彼の耳や顔のいたる所に光っていて。葉っぱを払う俺の手が触れる度に少しひやっとした。
(大分走り回ってたのかな?)
ぽかぽかと暖かい身体とは裏腹にちょっとだけ冷たいくるみちゃんの耳や、上気して赤く染まったほっぺを見ながら、俺はそんなことを考える。
俺の前ではとっても可愛く甘えん坊なくるみちゃんだけど、夏や三好からの噂を聞けば、くるみちゃんは普段は大分やんちゃ坊主な様だから。

「元気にしてた?」
「うん、してたよ!」

会うたびに俺に懐いてくれるくるみちゃんのにっこり八重歯全開の笑顔を見る度に、俺のおせっかい心が増していくのを、まだくるみちゃんは知らない。


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あきゅろす。
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