ハルノヒザシ 3 「止めろ、馬鹿野郎!」 「へー、随分元気になったじゃん」 グッと壁に押さえつけられ身動きが取れないが、俺は精一杯衞士を睨む。 「覚えてないの?俺が抵抗されればされるほど燃えるの?」 衞士の言葉にピタリと俺は抵抗を止めた。 思い出したくもない記憶が次々と蘇る。 コイツは…異常だ。 人を傷つける事を 人を痛めつける事を 人を貶める事を 純粋に楽しむ。 「まだ俺が付けた痕、ある?」 衞士が俺の手を掴み無理矢理表に返させる。 そこにあるのはいくつもの煙草を押し付けられた痕。 「大分薄くなってんじゃん?また付け直さないとね」 そういいながら衞士は俺の手のひらに口付ける。 そのまま舌を出し舐めたかと思うと、いかなり思い切り噛み付いて来た。 「…っつ…」 つぅっと血が流れるのがわかる。 反射的に振り払おうとしたが全然無理だ。 ピチャっと音をたてながら俺の血を衞士は舐めとる。 コイツ、嫌だ…。 その時、チャイムが鳴りだしたのが聞こえる。 五時間めが始まった。 「離せ、教室戻らないと…」 「放すと思ってんの?馬鹿だなー。春日ちゃんは」 これからが楽しいんじゃん、そう言いながら衞士は俺のシャツに手を伸ばす。 「背中の跡も見せてよ。見たい」 「嫌だ、止めろっ、離せ」 うるせぇよ、と腹を一発殴られ俺は咳き込みながらズルズルとしゃがみ込む。 「俺、春日ちゃんの背中の痕、すっげー好きなんだよね」 滅茶苦茶興奮するから、という衞士の声が 俺の中に絶望的に響いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |