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ハルノヒザシ

ライトが再び点いて。賑やかさを取り戻してきたグラウンド。ざわざわと帰り始める人もいる。俺と三好はせっかくだからもう少し居ようとパイプ椅子に腰を下した。
俺がちょっと疲れてきた首を摩っていると、三好がはあ、と手に息をかけていた。手袋よりポケット派の三好に、俺はさっき配っていたホッカイロをポケットから差し出した。
「あんがと。ああ、あったけ」
「冷えてきたね。なんだろう、味わったことのない寒さだよ。刺すような寒さってこういう感じかな」
「1月くらいはもっとやべーよ。夜中に起きてるとさ、室内にいても外が冷え切ってんのわかんの。手が一瞬で動かなくなる」
見ただけでわかる寒さってことだろうか、冬物足りないかな、と俺がその寒さを想像して、冬の格好を心配していると、また三好は椅子にそっくり返るようにして空を見上げた。俺も真似してひっくり返らないようにそっくり返る。君と同じ夜空をまだ見上げていたい。
なあ、前田、と三好が話しかけてくる。
「こんな空見てるとさ」
「うん」
「うわーって叫びたくなる」
「ふふ。気持ちいいだろうね」
大声あげる三好も見てみたいなと思いつつ、俺は体を起こして椅子に腰かけ直し隣りの三好を見た。三好はそっくり返ったまんま、星を仰ぐように右手を伸ばしていた。
夜空を見上げる君の瞳を覗き込んだら、君の瞳に星が瞬くのが見えるだろうか。
俺が三好を見つめていると、三好が気付いたのか首を傾けて俺に視線を向けた。
この距離じゃ、君の瞳の星明りは見えないけど、この暗闇じゃ俺の頬が赤く染まってもばれない。
俺は穏やかな気持ちで彼を見る。

口に出してしまおうか。俺の思いは、後数センチで溢れてきてしまいそう。

でも…。
俺は、まだしなくちゃいけないことがあるから…。
父さんへの誓いを果たすまで。
俺の想いはしまっておかなきゃ。
だから神様。数センチ。
俺の想いが溢れてこないように、抑えて下さい。
きっとこの想いは溢れてしまったら止められないから。
大好きな人のために、大切な人を裏切ることがないように。
どんどん膨らむこの気持ちは、俺の心を押し上げて苦しいけど。
もう少しだけ我慢させて下さい。
俺が誓いを果たしたその時は
俺のこの想いごと。ぱちんと弾けても構わないから。

「ねえ、三好。知ってる?星が綺麗な理由」
「…見えない花が咲いてるからだろ…」

その言葉にますます。
俺が三好を好きになったのが
胸を締め付ける甘い痛みでわかった。



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あきゅろす。
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