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ハルノヒザシ

(はあ、沢山買っちゃったよー)
結局午前中は三好と別行動をして。そのほとんどを毛糸選びに費やした俺は、ほくほくしながら三好との集合場所に急いでいた。レストラン街の噴水前。ちょっと迷ったが多分あれだろう。
(三好はどこだろ?)
噴水前について。待ち合わせする人や休憩する人で賑わっている人たちの中、俺はきょろきょろと三好の姿を探す、えーっと三好恰好は黒のコートに…
(あ…)
ほとんど探すこともなく。俺は彼の姿を見つけた。
噴水を囲う石に座ってコーヒーを飲んでいる彼の姿を。
足を組んで。コーヒーを持っている姿が映画1シーンのようで。
ざわつく彼の周りだけ別の空気が流れているようだった。
傍を通り過ぎる人が3度見しているのが目に入る。
(普段は制服だからそこまで感じないけど…。相変わらず私服姿の威力はすごいな…)
思わずそこに突っ立って見ていたい気分に駆られるが、すでに集合3分前になってしまっているので、俺はぱたぱたと彼に駆け寄る。
「ごめーん。待った?」
「いや。全然。良いの買えた?」
「うん。ばっちり。すんごく品ぞろえ良かった!三好はどこ行ってたの」
「まあぼちぼち本屋行って、服見て…。なんかすぐ時間たっちゃった。広すぎ」
ご飯食べるか、と三好が立ち上がる。
「何がいい?」
「前田決めてくれ」
「えーっとんじゃねー。うわー迷う!中華か、あ、タイ料理もいいな。ベトナム料理も食べたい。三好ってコリアンダー大丈夫?」
「平気。俺辛いの食べたいかも」
「んじゃ!タイ料理だね!行こう!」
店内マップを見ながら、俺たちはタイ料理のお店へと移動する。
店に入ると香る複雑なスパイスの香り。うーおなかすいてきた!
「俺、ガパオライスのランチにしようかな。トムヤンクンつくし」
「俺これ」
三好がプーパッポンカレーとやらを指さす。んーなんだろこれ。食べたことないや。
「これってなに入ってるの?」
「確かカニと卵」
「カニのカレーかあ。なるほどね!一口ちょうだい!俺も作る!」
「うん。食べて」
メニューを決めるだけでおおはしゃぎしながら、ようやくオーダーを済ます。
「午後どこ行く?」
俺がそう聞くと、三好が店内マップを見ながら、アイスティーを一口飲んだ。
「俺は優先順位は靴かな。後夏の服とパンツ」
「俺も服見るわ。弟君ってどんなの着るの?」
「夏は服全く興味ないから、俺が買ったのいつも着てるよ。背が伸びたからなんか買おうかなって。買わないといつまででも同じの着てるから。何が似合うかな?」
俺はセンスが無いので、夏はいつも可哀そうに青か黒のパーカーとジーンズばかり着させられている。せっかく夏はスタイルが良いし、背も高いから、それなりの格好をさせてあげる為に是非おしゃれな三好に手伝って欲しい。
「あーなんだろうな。弟君ガタイ良いし足なげーから何でも着こなしそうだけど」
「俺と体格同じくらいだったら服の共有も出来るのに。なんで夏ばっかあんな背が高いんだろ。羨ましい。同じもの食べてたのに」
「いや。弟君にばっか食わせてただろ。多分」
「だから夏もそんなこと言うけど俺も食べてるってば」
「見てないがほぼ断言できる。それ前田の勘違いだと思う。人に食わすの好きじゃん。自分の分まで」
「三好まで俺のこと田舎のおばあちゃんのように言う」
「その例えいいな。今も鞄の中飴入ってるだろ」
入ってるけど!と俺は思わずムキになりながら、鞄の中から飴を二つ取り出して、けらけら笑う三好に渡したのだった。


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