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ハルノヒザシ

「あ、ねぇ見て。ふたご座流星群観測会だって。天文部主催の」
授業を終えた帰り道。俺は、朝は貼っていなかったポスターが掲示板に貼ってあるのを見つけて、三好に声を掛けた。
「ふーん。再来週金曜日かあ。夜中の9時から…」
本格的な天体観測の経験が無い俺は、興味津々でポスターを熟読する。先着20名かあ。
「行きたいなら付き合うよ」
「本当に!これどうやって申し込むのかな。えーっと2Fの鈴原・高橋まで。あれ、鈴原君って…」
「興味あんのか?」
後ろからの声に振り向くと、剣道部の鈴原君が立っていた。相変わらず、目つきが鋭い。大きい荷物持ってるから、きっとこれから部活なんだろうな。
「鈴原君!天文部も掛け持ちしてるの?」
「まあな。天文部の方はあんまり活動してねーけど」
「これ、申し込みってどうするの?今言えばいい?」
「ああ、別に良いけど。お前ら二人で参加か?夜だからっていって、人前でいちゃつくなよ」
そんなことしねーよ、と三好がやや不愛想に言うと、なんだ、まだお前ら付き合ってねーのか、と鈴原君がにやっと笑う。
「前も言ったけど違うからね!三好と俺は友達!」
「ベスカプ取って、常にべったりで良く言うぜ。これからって奴?まあ、いいや。つーかさ、お前らって放課後暇だろ?実は天文部人手足りなくてさ。当日手伝ってくれる奴探してんだわ。特に礼もできねーけど」
鈴原君のずけずけ言いたい放題言ってくるところは、相変わらず誰かさんを思い出す。だけどまあ、ご察しの通り暇人な俺は、お手伝いするのは全く構わないので、いいよ、と頷いた。
「さんきゅー。助かるわ。あ、連絡先教えてくれよ」
「俺ガラケーだけどいい?」
「まだパカパカしてんのかよ。三好は?」
「あるけど…」
三好は何か言いたげだったが、鈴原君は全く意に介せず三好とラインを交換し、ついでに俺とも連絡先を交換してくれた。
「基本的には三好に連絡すっから。どーせ一緒にいんだろ。んじゃなー」
目的を達成するとさっさと行ってしまう鈴原君。さばさばしているところも誰かさんを思い出してならない。
「俺何も言ってないのに…」
ほとんど無理やり連絡先交換させられたスマフォを握りながら、三好が少々呆気に取られたようにぼそりと呟く。
「相変わらず強引でパワフルだったね。鈴原君。来年は夏、部活一緒だから仲良くしてくれればいいけど。それにしても、天文部でもあったんだ。剣道部練習厳しそうなのにすごいな」
あ、手伝いは俺一人で行ってくるから大丈夫だよ、と三好に言うと、いや、俺も行く、と三好は首を振る。
「手伝うのはいんだけど、微妙に納得がいかなかっただけなんだ。あ、ライン来た。なんだこの意味不明なスタンプは」
ポスターの前から離れ、寮に向かって歩き始めると、三好の手元で震えるスマフォ。画面を見せてもらえば、なんかよくわからない生き物がピースしているスタンプだった。
「あはは、確かになんだろこれ?ふふ、でも俺鈴原君嫌いじゃないよ。なんか、前の学校の友達思い出す」
「ああ、あの毒舌の」
「そうそう。ああ、三好に喜介を会わせたいなあ。喜介のあの容赦のない弾丸トークを三好にも味わってほしい。夏も敵わないんだから」
「弟君が敵わないだったら、俺多分一言も口開けないと思う」
そうかもね、と笑いながら昇降口をくぐると、朝降った雪はもうかなり溶けていた。すぐにまた降るらしいけど、俺は何故か残念な気持ちになる。
「前田、次の休みさ。買い物行かね?俺も服欲しい」
「いいね。俺も靴買おうっと。いつもの駅の傍のショッピングモール?」
「いや。ちょっと電車乗るんだけど。30分くらいのとこにでかい商業施設できたらしいんだよね。音羽が言ってた」
「え!そうなの!知らなかった!行きたい行きたい!」
三好と街降りるの久しぶりだね、と俺は歩きながらテンションが上がってしまう。
あ、でも、服買うってことは、あれ、早く渡さないと…。もしかしたら新しいの買うつもりなのかも…。
よし、今日中に頑張って終らそう!
おやつにまたちぎりパン食べる?と三好に聞きながら、俺は寮の自室の扉のカギを開けた。



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あきゅろす。
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