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ハルノヒザシ

「うわー雪だ。雪だ!」
寮を出ると、当たり前だが雪景色が広がっていて。15センチほど雪が積もっていた。
もの珍しさにはしゃぐ俺を、三好が寒そうにマフラーに顔を埋めながらポケットに手を突っ込んで見ている。
誰がやってくれたのか、もう学校の方に続く道は人が通れるくらい除雪されていて。登校する生徒達が、規則正しく一列になって歩いていた。
「もうずっと雪なの?」
「いや。最初の雪はわりとすぐ溶ける。中旬くらいから降り積もっていく感じだな」
ローファーやスニーカー履いてると滑るよ、という三好は既になんかオシャレなブーツっぽいスニーカーみたいなのを履いている。周りを見れば登山靴みたいなのや、底がゴムになっているのやら、皆さん冬仕様。うーん買いにいかねば。夏のも。すっころぶ前に。
ふと、前の方が騒いでいるのを見れば、一年生だろうか。校舎の前で雪合戦していて。
ちょっと羨ましく思った俺は、手袋を外して綺麗な雪を少しすくって丸めてみた。とりあえず前を歩く三好の背中に軽くぶつけてみる。三好の黒いコートに当たって雪玉が弾けた。三好が「まったくもう」みたいに軽く笑って俺を振り返り、軽く雪を投げ返された。俺のダッフルコートのお腹の部分が白く染まって。俺はきゃっきゃと喜んだ。ぱんぱんっと雪を払う手が当たり前だが冷たい。駆け寄って、三好の背中の雪も掃う。
「良いね。楽しそうで」
「えー雪ってわくわくしない?もっと積もったら雪だるまつくるんだ」
「冬休み入ると雪だるま作成大会みたいなのしてるから参加すれば。基本的に男子校らしく妙な雪だるましかないけど」
妙な雪だるまってなに?と聞くと、見てのお楽しみだ、と三好がにやにや笑った。眠いんだか、ふわぁと軽くあくびする。
「もう眠いの?」
「ん、ちょっと食べ過ぎた。焼きたてパンで全部味が違うとか、ずるい」
朝食にフライパンで作ったちぎりパンを4つ食べた三好は言う。朝から三好がそんなに食べるのは珍しいので、俺も嬉しくてちょっと食べさせ過ぎた。
「色んな味にするの面白くてさ。また作るね」
「起きたらいい匂いするからさ、ハイジになった気分だった」
すっかり恒例になりつつある、すまし顔での三好の迷言に笑っていると、校舎に着いた。昇降口前で、雪かきしている数人の中に、我らが担任西原先生のかったるそうな背中を見つける。
「西原先生おはようございます」「はよーございます」
「おはよー。前田、三好。遂に降り出したな。最悪だぜ」
雪かき用のスコップを立てて、そこに顎を載せながらめんどそーに溜息をつく西原先生。早起きしたのだろうか。髪がいつもにましてぼさぼさで。いつものよれよれした灰色のジャージに青いダウン。多分このままの恰好で教室来るんだろうな
「髭ぐらい剃ったほうがいいすよ。教頭に嫌味言われたくなきゃ」
「これが大人の魅力って奴なんだよ。そー思わんか。前田?」
「さーいーばーらくん?」
俺が西原先生に愛想笑いしていると、突如教頭先生が俺達の後ろから現れた。そのまま、「何さぼっているんだね」「いや、さぼってないすよ」と西原先生は教頭先生に連れてかれてしまって。
俺は少しおろおろしながら、三好はにやにやしながら、その背中を見送ってから、教室に向かったのだった。


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