[携帯モード] [URL送信]

ハルノヒザシ
初雪
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
6時27分。
枕元に置いてある携帯を開いて時間を確認してから、セットしていたアラームを止める。
(んー、今日もまた一段と寒いな)
お布団が名残惜しいが、俺はがばりと起き上がり、二段ベットを降りて、軽く布団を直した。
薄暗い部屋。足が冷たいと思いながら、唯一の暖房器具であるエアコンのスイッチを入れれば、ちょうど鳴り響く炊飯器のタイマーの音。ベットのポールに干してあったフェイスタオルを取って、台所の蛍光灯だけつけつつ、顔を洗いに行く。
(ううーさぶいさぶい)
戻ってきてクローゼットを開けて。制服に着替える為に、来ていたジャージを脱ぐと、ぞわっと鳥肌。クローゼットの中から取り出した服は冷たくて。俺はぶるぶる震えながら、ヒートテックを着てシャツに袖を通した。スラックスと靴下を履いて。ベルトを締めて。紺色の指定カーディガンを羽織る。
(さてと…)
着替えが終ったら、エプロンを締めて手を洗って朝食の準備。和風が続いたから今日のメニューは洋風に。フライパンのパンとスープと定番のスクランブルエッグ。後サラダと、ベーコンを焼こう。
さっそく昨日のうちにこねておいたパン種を引っ張り出し、適当な大きさに丸めてフライパンに並べて。焼いている間にお湯をを沸かして、グリーンサラダを作った。スープの具のじゃがいもと白菜と人参と玉ねぎもついでに切って。小麦粉と牛乳でクリームスープにしよう。
朝食をすぐに出せるところまで準備して。次はお弁当に取りかかる。
本日はオムライス弁当!ちょっと時間に余裕あるから三好のはひよこさんオムライスにしてやろう。ハムはウサギさんの形に切ってやろう。
開けた瞬間のあの表情が面白くて、ついつい時々やってしまうイタズラ。三好がいつもの動じない調子でパンダおにぎりとか食べているの面白いんだもん。
つい出来心で始めたイタズラのせいで、俺のキャラ弁作りという余計なスキルはこの頃上昇中だ。
にやにやしながら、お弁当を作り終えればそろそろ7時15分。
パンとスープのいい匂い。俺はマグカップを二つ取り出して、一つにティーバック。もう一つにインスタントコーヒーの粉を入れた。さあ、そろそろ起きてもらわなきゃ。
俺は、二段ベッドの梯子に手をかける。
「三好!おはよう!朝だよ!」
「……」
一回目じゃ起きてくれないってことは昨日相当夜更かししたな。
まだ、寝ますとばかりに布団に潜って出てこないルームメイト。冬になってますます寝起きが悪くなってしまった彼の枕元には読み終えられた小説と眼鏡とスマートフォン。俺は、すっかり潜ってしまった三好を、布団の上からゆさゆさ揺らす。んー、とか唸り声は聞こえるが出てこないので、俺は容赦なく布団を引っ剥がした。
「ほらほら、起きてっ!」
布団を剥がされてもくるりと丸まったまんま起き上がらない背中。すっかり部屋の中は暖まっているので、布団を剥がされても、すこしぐらい背中が出ていても効果はいま一つのようだ。
仕方ないなと俺は三好のベッドに上がり、ベッドサイドの窓のカーテンに手をかけた。窓でも開けてやろう…。

「あっ!!」
広がる銀白に、思わず声が出た。
視界が真っ白に染まっていた。
昨日までは確かに降っていなかったのに。一晩のうちに降り積もったのだろうか。道理で今日の朝は冷えたはずだ。
きらきらと朝日を受けて、銀雪が輝く。
今日から始まる12月を知らせるように。
雪があまり降らない地方に住んでいたいた俺は、グラウンドに広がる何のあともない雪景色にしばし見とれてしまう。
「ねぇ、三好。雪だよ。雪」
「ん…うん。おはよ…」
「おはよ!はい、眼鏡」
のそりと身体を起こした三好が、俺から眼鏡を受け取り、眩しそうに俺の隣で窓の外に目を向けた。
「すごいね。本当に雪降った!」
「ん…まぶし…、なんか、いい匂いだな」
「今日はパン焼いたんだ。ご飯にしよう!」
雪にすっかりテンションが上がってしまい、はりきってまだ半分夢の中の三好を急かしてベッドを降りて、マグカップにお湯を注いだのだった。


[次へ#]

1/36ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!