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ハルノヒザシ
12(三好視点)※
※引き続きグロ悪趣味です。苦手な人は飛ばして下さい。

すぐに自分の部屋に戻ってきて。
扉をあけて、玄関に入ると、ぎゃあああああ!と断末魔のような叫び声がした。
よく叫び疲れねぇよなと思いながら、再びリビングのドアを開ける。
「うるせんだよっ!お前ら!何時だと思ってんだ!いい加減にしろっ!!」
怒鳴りながら、部屋入ると俺は異変に気付く。
(なんだ、この血の匂い…)
いつもよりどう考えても濃い血の臭いに、思わず眉をしかめた。
ベッドに目を向ければ、半分身を起こして、にやついていた衛士と視線が合う。
その口は鮮血で濡れていた。びちゃり、と血の塊のようなものを床に吐き出す。
血の塊は、いくつか床に転がっていた。明らかに、液体以上の質量を持ったその塊。
「あーやっぱ不味いな。なんだ、三好はまた来たのかよ」
「な、に、してんだ?お前ら…」
藤堂に目を移せば、藤堂はこちらに背を向けて身体を丸めて、嗚咽していた。ガクガクと身体がおかしい程痙攣している。
ベットのシーツに血が染み込み続けているのに気付いた俺は、慌てて二人に近づいた。
「ちょ、大丈夫かよ。やり過ぎだ、どけっ、衛士!藤堂、おい!藤堂」
藤堂の身体を揺さぶり、こちら側に身体を向けさせると、藤堂の顔はペンキをぶっかけたように血塗れで。抑えている右の手からも血が溢れ出していた。
どう考えてもやばい出血量。俺も喧嘩を散々してきたが、ここまでの出血は初めて見た。
一瞬その紅にひるんでしまうが、藤堂の身体が冷たくなりつつあるのに気づいた俺は、とりあえず止血だと、枕から枕カバーを引っぺがす。とりあえず、藤堂が抑えている右手を縛ろうと、藤堂の手をどけさせると…
そこに、あるはずのものがなかった。
思わず息を呑んだ俺を、衛士が鼻で笑う気配。
まさか、さっきのは…。背筋に戦慄と寒気が駆け上がる。こいつら、頭おかしいぜ…。こんな…。こんな…!!余りのことに言葉が出ない。
「はは。どーした手が止まってるぜ。三好クン?」
衛士のせせら笑いに気を取り直し、俺は思い切り強く枕カバーで藤堂の右手を縛りあげる。
いつか遠藤が俺にやってくれたように。そのまますぐに俺は携帯で、救急車と寮の非常用の連絡番号に連絡をいれた。
立ち上がった衛士が、後ろで俺を見下ろしているのがわかる。
藤堂の頭は血塗れ過ぎて、出血箇所がわからず、こんだけ血が出ているなら頭だろうと、藤堂の脱いだシャツを頭に撒いていると、後ろの台所で血を洗って戻ってきた衛士が、違うぞと嘲笑った。
「そこじゃねーよ。三好クン。ここだ、ここ」
そういって衛士は持ってものを、俺に見せた。これを洗っていたらしい。
ビー玉より大きい…、白っぽいボール……、目が悪くなってきていた俺は、衛士の手元を凝視する。
次の瞬間気付いた。
ショックで胃がひっくり返りそうだったか、歯を食いしばって耐える。冷や汗が流れてきて、心臓が痛い程打って、おかしくなりそうだった。
「衛士っ!!お前っ!!!おい、藤堂、藤堂!!大丈夫かっ!!藤堂っ!!!!」
急いでシャツをそこに当てて、俺は圧迫止血を開始するが、あっという間にシャツが血で染まっていく。
「てんめぇ!!!こんなことして許されると思ってるのかっ!!」
「ははは、そいつが物足りなそうにしてっからよ。叶えてやったんだろうが」
帰るぜ。俺、と衛士はなんでもないような顔をして、ナイフを拾いシャツを着て、踵を返す。
「待て!おい!こらっ!!死んじまうぞっ!コイツっ」
「これで死ぬなら、本望だよな。鋼。俺に殺されるなら」
俺は、藤堂の首が微かに頷くように動き、口元が微かに微笑んだのに気付いてしまう。
「衛士っ!待てっ!!ふざけるなっ!!」
「はは、さっき止めてりゃ、無事だったのにな。お前が見捨てたんだろ。三好クン」
衛士は勝ち誇ったように笑い、そのまま出て行ってしまった。

これもらうぜ、と
藤堂の右目を持って。


「くそっ!お前ら狂ってる!!バカ野郎ーーーっ!!」
思わず俺は、絶叫した。

長い長い数分が過ぎて。
ようやく、再びドアが開けられる頃には、藤堂はほとんど虫の息になっていた。
二人きりの部屋で。生暖かい血が流れ続けて。段々ルームメイトの呼吸が弱くなっていく。
それをどうすることもできないあの恐怖は。
あそこで止めておけばよかったのにしなかった後悔は。
あのまま帰らなければ、翌朝俺が見たであろう光景は。
目の前に溢れる血と共に、ぐるぐると嫌なことばかり考えてしまうのは、恐怖でしかなく、気が狂いそうだった。


それらは、今もあの数分間の絶望と共に俺の中にトラウマとして巣くっていて。


忘れられる、訳がない……。
藤堂の腕に抱かれながら。俺は天井を見つめた。
藤堂の身体は暖かい。あの時は、どんどん冷たくなっていたのに。


お前、本当は恨んでいるんだろ。
あの時助けなかった俺を。
お前の右目も指も。
俺があの場で立ち去らなければ、無くなることはなかっただろう。
だから、お前恨んでいるんだろう。許せないんだろう。俺を。
だから、戻ってきたんだろう。俺に復讐するため。
俺も、後悔している。
俺には、止めることができたはずだから。
俺にしか、できなかったから。
だから、お前の恨みは当然だと思う。
償えるのなら、償いたいと思う。
きっと、彼も、人を傷つけたら。そうするだろうから。
人のせいにして、見ないふりをしたまま、君といられそうにないから。
これは、俺が解決しなければならない、君を巻き込んではいけない。
そう、思った。あの日の朝。
自分でそうする、って決めたんだ。
俺は藤堂の身体をゆっくり押し戻す。

「覚えてるよ、藤堂」
あの日見た光景は。目に焼きついている。
「だから、二度とお前にあんなことをしてほしくない」
おはようとおやすみをくれたお前に。
「俺は、今度こそお前を見捨てない」
例え、お前が何か企んでいようと。それごと、俺はお前に、償いたい。

俺の言葉に、藤堂は一つしかない目を少しだけ細めた。
「そうかあ」
優しいね、十夜君は。

そろそろ、寝ようかな、と藤堂が立ち上がった。


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