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ハルノヒザシ
11(三好視点)※
※引き続き悪趣味グロ注意※

あれは去年の10月の末。
俺がいつも通りいやいや自室に帰ってくると、玄関には靴が二足あった。
大きく溜息をつきながらも、門限ギリギリのこの時間、行く場所もないので、俺は二人とも叩きだしてやろうと思いながら、靴を脱いだ。
がたがたという物音。ああいやだ。本当に。ちらりと思い出したくない、以前の藤堂の姿が脳裏に過って、嫌な予感がした。でも、どうすることもできない俺は、そのまま歩を進める。

「ああーーーっ!!やめてやめてやめて海ちゃんやめてっ!!」
「ああ?こうして欲しかったんだろうがっ!あはは!ははっ!!あははははははっ!!」
また、見たくもない光景。ベットのポールに両腕を縛り付けられた血だらけの藤堂の上に、衛士が馬乗りになっていた。本当に、見たくもない。でも、何回か遭遇した同じような光景に、慣れてきて無関心になりつつある俺がいた。お前らが何をやろうと、俺の目の届かない場所なら、どうでもいい。
俺に気付いた衛士が、何をしたんだが血まみれの唇を舐めながらせせら笑う。
「よー鋼。やっと三好が帰ってきてくれたぜ。よかったなあ。全部無くならなくて」
「はぁ、はぁ、はぁ…三好く……」
「まずはおかえりだろ、礼儀がなってねぇな!駄犬がっ!!ぎゃははっ!」
衛士が理不尽に言い、藤堂の腹を殴り、藤堂が身体をくの字に曲げて血反吐を吐いた。
血と涙と鼻水と涎で汚れたその顔も。何回も見せられると、同情もわかなくなってきていた。
いくら血塗れのお前を心配しても、何度も止めろと間に入って引きはがしても、結局お前は衛士を求めるじゃないか!
もう沢山だ。どうせすぐにお前は明日もへらへらして、衛士を追うんだろうっ!俺の気持ちなんて踏みにじってっ!!

どうでもいい。どうでもいい。俺の前から早く消えてくれっ!!

ぱちん、と衛士がバタフライナイフを回してから、藤堂の喉元にその刃を突きつけた。すぐに一筋赤い血が流れ出す。
「ほら、鋼、ルームメイトにおかえりは?
「お、か、えりなさい…、三好、くん…」
ごぼごぼ、と喘ぐように藤堂が言った。
ちっ、と俺はあらんかぎりの侮蔑をもって舌打ちをする。そんな顔も何度も見たっ!バカにしやがってっ!!お前らのお遊びに俺をもう巻き込むなっ!!
「んだよ、お楽しみ中か?邪魔して悪かったな」
この日の俺は二人を追い出すより、自分が出ていくことを選んだ。
もういい、談話で寝よう。一日くらいどうとでもなる。
踵を返そうとすると、藤堂の声が追いかけてくる。
「み、三好、く…、海ちゃ、とめ、て…、僕、しんじゃ…」
俺は何度もお前を助けたよな。そうやって助けを乞うお前を。いつも無駄だったよな。もうお前らのお遊びの片棒を担ぐのはごめんだ。
俺は、藤堂を冷たく一瞥して廊下へと出る。

「ははっ、残念だったな、鋼。じゃあ続きしようか…。なに、殺しはしねーよ」
「ああっ!!海ちゃん…怖いっ!!!あああっん!!」
俺の背中に響く藤堂の悲鳴。俺は振り返りもしなかった。

(あー阿保らしい…)
そのまま部屋を出て、談話室に行って、座布団を引っ張り出し、寝転がって。
テレビをつけてみたが、内容が頭に入ってこない。
一時間ほど寝ようとしてみるが、どうにもアイツらの様子が気になって眠れなかった。
結局いつもこうだ。ほっとこうと思っても、また血まみれの藤堂が一人転がっている姿を見たくなくて。アイツらが動揺する俺を見て喜んでいるのはわかっているけど。藤堂を衛士がけしかけてるって気付いているけど。どうしても横やりを入れてしまう。
今日こそ、ほっとこうと決心したのに……。ただ藤堂はあーゆーのを喜ぶ変態だってわかっているのに。
俺は、渋々立ち上がった。だらだらと、再度先ほど出てきた部屋へと引き返す。

今思えば、最初の時は、間に合ったのに。
過去は変えられず、後悔とトラウマが残っただけだったのに。



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あきゅろす。
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