ハルノヒザシ 3 俺にも見せて、と三好が言うので、眼鏡を外していて自分の今の姿がよく見えない三好の為に携帯のカメラで撮って、自分の姿を三好に見せてあげる。 「はははは。なんだこりゃ。全然俺だとわかんねー」 こりゃいいや。俺だと一見ばれねーだろ、と携帯の画面を見ながら愉快そうに笑う三好。よかったよかった。多分パンフレットでバレると思うけど。 「最初からこの顔で出るの?」 「うん。始まる前に口紅とチーク以外はしちゃうつもり。最初はサングラスかなんかで隠して、変身する時に口紅とチークは急いでつける感じでいこうかと」 「おーよかった。俺自分でやれって言われてもひゃくぱー無理だと思うから。口紅くらいだったら、まぁいけるかな」 それにしてもすごいな、化粧ってと三好が感心したように呟く。 ほんとだよ。土台が元々いいから尚更。 メイク用品を片付けながら俺は大きく心の中で頷いた。 「着るのは問題無さそうだったね。んでドレス以外の衣装の時なんだけと。コサージュごとストールとって中のパニエをこーやって外して」 「うん」 「こっちの衣装を上から被れば…」 俺が、違う衣装を持って三好の元に近づこうとしたその時だった。衣装からほどけたリボンが床に垂れていたのに気付かず思いきり踏んでしまう。 (あ…やばい…) ツルツルの滑りやすい家庭科室の床。更にサテンのリボンを踏んで思いきり滑った俺は、目の前にいた三好に思いきり倒れこんでいく。 「…あ…」 転んでいく途中、一瞬のはずなのに、なぜかしっかり驚いた表情の三好と目が合った。 次の瞬間。 全身に衝撃と三好の体温。 俺の下敷きにされた三好の身体がどこかにぶつかって、鈍い音がした。 家庭科室が、静寂に包まれる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |