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ハルノヒザシ
放課後家庭科室
次の日の放課後。家庭科室。
「じゃっじゃじゃーん」
どう?と俺は家庭科準備室から出してきた完成品のドレスを三好の前で広げて見せた。
「すげーな。いや、マジで。チャイナドレスの面影全然ないじゃん」
いつも通りの無表情のまま、三好が誉めてくれる。
さっそく着てみるか、と三好が着ていたカーディガンを脱ぎ出したので、俺は脱ぎやすいようにボタンとファスナーを開けてから三好にドレスを手渡した。
「ちょっと待ってー」
家庭科室は一階で運動場から丸見えの位置にあるので、俺は急いでカーテンを全て閉めて回る。ほとんど誰も来ないことはよくわかっているが、用心には用心をと前と後ろの出入り口も施錠した。
「大丈夫。きつくない?」
着方がわからず、四苦八苦している三好に駆け寄り着るのを手伝いながら、俺はドレスの状態をチェックする。
うん。ファスナーも大丈夫そうだし。丈もちょうどいいサイズだ。 絶対右腕は見えないし。
「三好ちょっと裾手を入れるよ」
「うん」
最後にドレスのスカートの部分を膨らませるように整える。
「んで最後にストールとコサージュを…」
三好の首もとに飾るように付ければ… 完成!
「こんな感じです!なんか違和感ある場所ある?」
「うん。今んとこ大丈夫。思ったより動きやすいよ」
くるりと確かめるように机の回りを一周し、三好が言う。
「どーだい。着せた感想は?」
「ん、三好赤が本当に似合ってカッコいい」
「カッコいいか?これー?面白いの間違いだろ」
赤いドレスを身にまといニヤリと笑う三好は、綺麗とか可愛いとか面白いとかそういうのじゃなくて、男が女の人の服を着てる違和感とか滑稽さとかを更に通り越して、むしろ真っ赤な色がカッコよかった。
(カッコいい人ってほんと何しても格好いいんだな)
三好ほどこの言葉を実感させてくれる人はそういないだろう。俺が着たらちんちくりんになるだけだろうし。
完全にドレスすら着こなす三好にしばらく見とれた後、 俺は三好に手を伸ばした。


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