ハルノヒザシ グリルパルツァーより ダダダダダッ!! 誰もいない家庭科室にミシンの音が響く。 ここ数日、俺は放課後家庭科室に籠って、一心不乱にミシンを踏み続けていた。 魔法使いの衣装、シンデレラの継母やお姉さんの衣装、舞台の装飾アイテム、そしてシンデレラの衣装。 明後日衣装を着て、体育館で動きを確認しようということになっているので、何としてでも間に合わせなければならない。 明日は三好に初めて衣装を着せる約束をしているし。 (間に合うかな?) 少々内心焦っているが、久しぶりに踏むミシンは楽しかった。 昔からお裁縫は好きだ。小さい頃は夏の手提げ袋を縫っていたら指まで縫ったり、針を折って吹っ飛ばして、泣きながら探したりとと、色々失敗していたけど。 自分が作ったものが形になるのは、嬉しい。使ってくれれば尚更だ。 (七時か…) そろそろ帰らないと。三好がお腹を空かして卵焼きに挑戦し始める頃だろう。見ていないと危ない。一昨日はフライパンが丸焦げになっていた。 飾り付けは後からでもできるしな。ミシンはもう少して一段落つくし。 再びミシンの音を響かせながら、俺は今後の予定を頭の中で考えた。 「よし!!出来た!!」 なんとか形になったドレスを俺は広げながらかざしてみる。うん。自分で言うのもなんだけど、良い出来!! 待ち針の数を確認し、しつけ糸が変なところに残っていないか、スカート部分を丹念に捲りながら見る。よし。おっけー。 さっそく三好に見せたいが、明日まで我慢しようと紙袋に入れて家庭科準備室にしまっておくことにした。 持ち物を鞄にしまい、ミシンを片付け、軽く箒をかけてから、俺は家庭科室の電気を消した。 こないだまでは七時でも明るかった気がするけど、大分日が傾くのが早くなり、廊下は薄暗い。 俺は小走りで職員室まで向かう。 そして廊下の角を曲がろうとした時、どんっと誰かにぶつかった。 「あっ…すみませんっ!!」 バラバラと持っていたものが床に散らばる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |