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ハルノヒザシ

「う、動かないで下さい!危ないからっ!!」
薄暗い廊下で相手の顔はわからないが、俺は思わず大きな声を出した。
俺の持ち物には針がある。もしかしたらそこら辺に散らばってるかもしれない。
とにかく…明かりを…。
そう思って壁に手を伸ばした瞬間、パッと廊下が明るくなった。相手が先に電気をつけてくれたらしい。
俺は数歩先にいたぶつかった相手の顔を見上げる。
「匂宮、先輩…」
「てめーか。動くなってなんだよ」
いつものよーにつまんなそうに俺を見下ろす匂宮先輩。
一時期は大分痩せていたが、今は大分体調も戻ってきたらしく顔色もいい。
「あの、俺針を持ってて。ああやっぱり散らばってる!!」
金属音がしたので嫌な予感がしていたのだが、案の定ちらばっている俺の裁縫道具。慌てて注意深く拾い上げていくが、一本縫い針が足りない…。
(やばっ…)
縫い針なんか落としていく訳には行かず、俺は顔を青ざめさせながら地面に四つん這いになり、必死で針を探す。
「針って…裁縫のかよ…」
「はい…足元気をつけて通って下さい。すみませんぶつかっちゃって」
状況が飲み込めたらしい匂宮先輩が呆れたように言ったので、俺は四つん這いのまま1度顔を上げて、それから頭を下げた。
すると、匂宮先輩がその場で膝を曲げる。
「どんくらいの?」
「あの、こんくらいの短い針なんですけど。待ち針じゃなくて、本当に普通のただの針…」
「お前の荷物に紛れてんじゃねーの。もう一回確認して見ろよ」
そう言って、自分は床を探してくれる匂宮先輩。
俺は一瞬ぽかんとした後、慌てて自分の持っていた荷物を一度ひっくり返した。
「あった。これだろ」
「これです!ありがとうございます!!」
しばらくして、針は無事に匂宮先輩が見つけてくれたのだった。



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