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ハルノヒザシ

お墓参りから帰ってくると、家ではもうすっかり会食の準備が整っていた。
広い和室に高そうな御膳が並べられ、物々しい雰囲気が漂っている。
「なんの意味があんだよ…」
もうスーツもこの雰囲気もうんざりらしい夏が、小さな声で毒づいた。
やめなさいと、肘で小突くが夏のつまらなさそうな表情が引っ込むことはない。
(えーっと、ここか…)
お膳に添えられているカードを見ながら着席すると、お手伝いさんが来てジュースをコップに注いでくれた。
全員のコップが満たされたところでお爺さんが立ち上がる。
「本日は我が子、四季の法要に会してもらい感謝する。ささやかではあるが食事を用意したので食べてもらいたい」
お決まりの挨拶の後、みんななんとなく挨拶しあって食事を食べ始める。
昨日の旅館で食べた料理よりも、ずっと高い物な筈なのに、味がしない。
空気が壊滅的に重いからだ。
俺達はまだいいが、叔父さんのところの従兄弟達は小さいのによく耐えているなと思う。
みんなわかっているのだ。
ここの主であるお爺さんが、まだ自分の息子の死を引き摺っていることを。
愛して、期待して、夢を見ていた。
お爺さんの息子は、余りにも早くこの世を去ってしまった。自分の知らないところで。
お爺さんの俺に対する深い憎しみは、そのまま父さんに対する深い愛情の裏返し。
俺もそれをよくわかってるつもりだ。
母さんが再婚した時、俺達を狭城学園に入れるための資金を提供してくれたのはお爺さんだった。今も俺達の学費の殆どをお爺さんが出してくれている。
感謝しなくてはならない。一時は高校を辞めて働こうと思った俺が、夏とまた同じ場所にいれることを。
俺一人じゃきっと夏に重い苦労をかけていた。色んなことを我慢させていた。
例え俺はどうでもいい、それ処か忌むべき存在だとされていても。

俺はお爺さんに感謝をしなければならない。


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