ハルノヒザシ 11 (あれ、おっかしいな) そそくさと旅館の中に戻り、お土産屋の中で兄貴を探すが、兄貴の姿か見つからない。 一人で部屋に戻ってしまったのだろうかと歩き始めたその時、先にあるロビーの椅子に座っている見慣れた姿を視界にとらえた。 「兄貴!」 そう言って駆け寄ると、じとっと上目使いで睨まれた後、つん、とそっぽを向かれた。 テーブルの上にはちょこんと3分の1くらい食べられた抹茶アイスが一つ。食べながら待ってたらしい。 「勝手にどっか行っちゃう夏なんて知らない」 「トイレだよトイレ!」 「嘘!俺見にいった時誰もいなかったもん。部屋にもいないし」 「暇だからそこらを探検してたんだよ。俺にもアイスちょーだい!!」 あーん、と隣に座り口をあけた俺をシカトして、アイスを一口食べる兄貴。 「もーごめんてばぁ!!」 俺が泣きそうな声でそう言うと、「もう」と口をへの字にまげながら、それでもスプーンで一口アイスを口の中に入れてくれた。 苦くて甘い抹茶アイス。とろりと口の中で溶けていく。 「美味し…」 も、一口ちょうだい、と甘えた声でねだると呆れたようにため息をつきながら、兄貴がもうひとさじアイスを差し出してくれる。 「欲しいならもう1個買ってこい。お金あげただろ」 「お腹いっぱいだから兄貴の半分食べればいい」 「もー仕方ないな。そう言って俺の食べてるもの半分以上食べるんだから」 「兄貴が食べてると美味しそうに見えるんだよね」 兄貴が食べさせてくれるんならまた格別。 また一口アイスを食べる兄貴の口元を見ながら、俺はこっそり、また唾を飲み込んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |