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ハルノヒザシ
10
暗い駐車場。
きゃっきゃと騒ぎながら歩いていく奴等。
ここだったら旅館からは見えないな、という位置まで来た時、俺は「すみません」と声をかけた。
奴等が一様に振り返る。
「え、誰こいつ」
「知らなーい」
「お前に声かけてきたんじゃねぇの」
「ほんと!?坊やぁ」
下らない会話には耳も貸さず、俺はじっと一人一人の顔を見定めた。
すーっと腕を上げ、指を指す。
「そこの汚い金髪のおにーさんと趣味悪い入れ墨のおにーさんとニキビ面のおにーさん。その3人だけに話があるんだ。残ってよ」
「はぁ!?」「なんだコイツ!?」
挑発的な俺の言葉にようやく殺気立つ奴等。
「あ、わかった。コイツさっきのグロい奴といた奴だよ。何、僕怒っちゃった。ごめんねぇー俺嘘がつけないやつだから…ぐぁ!!」
俺の事を思い出すように話始めた金髪の台詞を、俺は最後まで言わせなかった。
容赦なく握りこんだ拳を顔面にぶちこみ、怯んだところに腹に一発。身体を曲げてえずいたところを思いっきり蹴り飛ばした。
「な、なにすんだ!!コイツ!!」
すかさず近くにいたニキビ面を同じように沈め、後一人を睨みつける。
「は、ヤバイんですけどコイツ!!うぜー。誰か呼んでくる!!」
汚い言葉で俺を罵りながら俺の脇を駆け抜けて行こうとする連れの女。
旅館に行かれては兄貴にバレるので、とりあえず捕まえて口を塞ぐ。
「っつきゃぁ…」
「黙ってなよ。おねーさん。言っただろ。この3人にしか興味ないって。でも俺男女差別は嫌いなんだ。邪魔すんだったらあんたも潰す」
顔面整形されたくなきゃ、大人しくしてな、と耳元で囁き震えだした身体を乱暴に放すと、その女はその場にへたりこんだ。
「よかったねぇ。おにーさん。俺は今日すっごく機嫌がいいんだ。普段だったらこんなんじゃ済まさないぜ。四肢の骨ニ、三本ずつでももらってたとこだ」
最後の一人に近付きながら俺は言う。
「う、うわあぁあ!!」
走って逃げようとする入れ墨の襟首をつかんで引き倒し、腹を踏みつけた。ごぼり、と入れ墨が嘔吐する。
「おにーさん達いいとしなんだから、これからは言って良いことと悪いこと、考えてから口にだすんだね」
良い勉強になったろう。
そう言うと俺は入れ墨の股間を蹴り上げた。失神した入れ墨の服で拳をぬぐいながら財布を取り上げ中を確認する。
「○○大学の生徒さんね…。みんなそうなのかな」
残りの奴等を一人一人見据えながら、俺はそのカード型の学生証を握り潰した。
「話は終わり。もう俺達に関わらないでねおにーさん。おねーさん」
さよなら。
それだけ言って、俺はその場を後にした。

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