ハルノヒザシ 10日〜前田夏月の人生最良の1日〜 ※注 ずっと夏月視点です 「うわぁ!すごいすごい!!」 本当に金ぴかな建物が外にあるんだね!! 金閣寺を見ながら、きゃっきゃっと隣で兄貴がはしゃいでいる。 今日は待ちに待った兄貴との京都旅行の日。 そして、俺の15歳の誕生日だ。 誕生日に京都の地で兄貴を独占できる。 これ以上の幸せがあるだろうか。幸せ過ぎてこれは夢なんじゃないだろうか、と思うほど俺は今幸せでしかたない。 「ね、夏ー写真撮ろうよー」 京都ではしゃぐ兄貴を見ているだけで幸せ過ぎる俺は、兄貴の声にハッと我に返る。 「うん。じゃ撮るよ」 「わースマフォって便利だねぇ」 兄貴の隣でこないだ買ってもらったスマフォをかざし、うまくバックに金閣寺を収めるために調節していると、感心したように兄貴が言う。 「はい、撮るよーちゃんと見てー」 にこりと笑ってぴったりくっていてくる兄貴の温もりは、炎天下の京都の中でも特別で、俺を更に幸せにしてくれた。 「見せて見せて。あ、いい感じ」 「後で好きなの送ったげるね」 「ありがとー」 じゃ、もっと奥行ってみよー!! 楽しそうに砂利を踏んで、歩いていく兄貴の背中を追う。 そんな楽しそうな顔がずっと見たかった。 (言ってみるもんだなー) そんな兄貴を見ながら、俺は昔を思い出す。 [次へ#] [戻る] |