[携帯モード] [URL送信]

ハルノヒザシ
6・(望月視点)
「それにしても懐かしいな。俺達が果たし状渡しに行った時からもう三年も経つんだ」
しばらく笑いながら果たし状を眺めていた哲だったが、ふと思い出したように視線を遠くし、しみじみと言う。
「そうだな。もう今は受け取る側だもんな。これが終われば引退だし」
早いもんだな。三年間って。思い返せばあっという間だった。
あの頃部長だったきょーたさんに俺が果たし状渡してからもうそんなに経つのか。
俺達の時の下克上は色々あって大変だったな。そりゃーもう楽しかったけど。
「そういやあんとき、潮、きょーたさんにぶん殴られて殴り返して乱闘騒ぎになったんだっけ?」
ぼんやりと俺が思い出に浸っていると、同じようなことを考えていたらしい哲が笑い混じりに口を開く。
「ああ、そんなこともあったな。まーなんか同点になっちゃったから、場外で勝敗つけようっていったのはあっちだぜ」
「受ける潮も潮だよ。その後二人で校庭走らされたんだろ。はは、笑えたなーあれは。もはや伝説だろ」
「この日は全力で歯向かうのが礼儀だってあの人言ってたからな。ま、確かに歯向かうことしか考えてなかったけど。若かったなー、俺も…」
引退して行く自分たちが心配しないように、頼もしい生意気な姿を見せてくれ、とそう言って鼻血を流しながら笑ったきょーたさんの笑顔を昨日のことのように思い出す。
あの人の立場になって、はじめてよくわかる、その気持ち。
後輩なんてクソ生意気な方が、物怖じしないほうが、歯向かってくる方がこんな箱の中ではちょうどいい。
去っていく身としては。
ま、その辺は心配なさそうだけどな。
さっき自分の所に来た後輩を、教室を出ていた二人組を、思い出しながら、俺は思う。
「なかなか今年の中学生はガッツがありそうだったな」
「ああ。教良木も前田もやる気満々って感じで可愛かったよ」
「ハハ、んだな」
じゃあ、せいぜい最後まで後輩しごきに行きますか。
そう言って、俺はガタリと椅子を鳴らしながら立ち上がった。
この日、歯向かうのが後輩の役目なら、先輩の役目はそれを叩き潰してやること。
最後まで、全力で。
中学生、高校生。
俺達の関係は、そんくらいでちょうどいい。
さぁて、最後まで楽しませてくれよ?
ぐーっと肩を伸ばしながら、俺は心なしか弾んだ足取りで、哲の教室を後にした。

[*前へ][次へ#]

13/58ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!