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ハルノヒザシ
5・(望月視点)
(おっ…)
ホームルーム終了後、隣のクラスの哲に借りた辞書を返しに行こうと、俺が自分のクラスを出たちょうどその時、隣のクラスから出てくる見慣れない二人の人物。
生意気そうに笑いながら、自分達の場所へと戻っていくその二人は、間違いなく中学生。
(果たし状か…。隣のクラスだと剣道かテニスの奴等だろうな)
自分自身先程後輩から果たし状をもらったばかりなので、すぐに中学生達の目的も察しがついた。
(あ、しかもあれ前田の弟じゃねーか。つーことは剣道だな)
何度か見たことがある後輩の弟。
ほわんとした雰囲気の裏表のない兄とは正反対に弟の方は一癖も二癖も腹の中に隠し持ってるような…そんな感じのあの兄弟。
妙にバランスが取れているところが面白い。
(そうか、弟君も来るわけね。面白くなりそうじゃん)
高校棟を我が物顔で歩いてく中学生二人の背中を見ながら、何だか楽しくなる。
「哲ー!サンキューな!」
「ああ」
辞書を片手に窓際の自分の席に座っていた哲に近付くと、予想通り剣道部部長である哲の手元には先程の二人が置いていったであろう果たし状が広げられていた。
嬉しそうに眺めている哲の前の席に座り覗き込んで見れば、半紙にこれでもかというくらいに挑戦的に筆で内容が殴り書かれている。
「はは、なんじゃこりゃ?」
若いねー、と思わず笑ってしまうくらい反抗心にみちみちたその果たし状。
まぁ、下克上とは一年で唯一、正当に中学生が高校生に逆らうことが許される機会だしな。
これくらいやってくれなきゃ、こちらとしても面白味がない。
「潮ももらった?」
「もらったもらった」
流石に俺相手にそこまで挑戦的なのはこなかったけどな。
ニヤリと笑いながら言うと、確かにね、と哲はいつものように人のよさそうな笑みを浮かべてニコリと笑う。

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あきゅろす。
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