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ハルノヒザシ
4・(夏月視点)
「ふ、ふ、ふ…」
萩尾先輩とのやり取りを終え教室を出た途端、まるで今まで押さえていたように肩を震わせながら横を歩く教良木が不気味に笑い始めた。
こいつの奇行はいつものことだが、流石にここは高校棟。全くもってまともな神経の俺としては、イタズラに悪目立ちするのはやめてほしいの一言だ。
「あは…、明日が楽しみだなぁ」
「…お前、すごくキモいよ」
笑い続ける教良木から気持ち一歩だけ離れながら冷たい声で俺がそう言うと、ニヤッと一層気味悪く笑いながらチラリと視線だけ上げて教良木が俺を見上てくる。
うっわー性格悪そー。
「だってさー、正々堂々と年上を叩き潰せるいい機会じゃん。下克上最高」
秀一さんとも会えるし。あー楽しみ。けけけ。
そんなことを言いながら、スキップ混じりに俺の前を歩いてく教良木。
あんな人の良さそうな萩尾主将を見ながらそんなことを考えていたのかコイツは…。
果たし状書くときも妙にノリノリだったし。実際悪ふざけし過ぎたんじゃないか?あの内容…これくらいでいんだよ、て言うからそのまま渡したけども。
ったく、高名な寺の一人息子の癖に、なかなかにひねくれた性格してんのな。
いや、だからこそなのか?と俺はどうでもいいことを考えながら教良木の後を追う。
「まー、前田だって負ける気は更々ねぇだろ」
「当たり前だ」
「けけ、前田のそうゆうとこ好きだよ」
さあ、みんなが待ってる、帰って練習、練習!と勢いよく言った後、突然教良木は走り出した。
まっすぐ、中学棟の外れにある剣道場へ向かって。
「あ、待てよ!」
一分一秒でも早く剣道がしたい、その気持ちは同じな俺も、その後を追って走り出す。
「こらー!そこ!何してるんだ!」
「ハハハ、もしかして怒られてる?俺達」
「やべー、やべー。じゃ、逃げようぜ!」
「ラジャー、ってすること何一つ変わってねぇ!!」
俺達のドダバタと言う足音を聞き付けてやってきた先生の怒声もなんのその、俺達ギャーギャー騒ぎながらは全速力で校舎の中を駆け抜けて行った。

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あきゅろす。
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