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ハルノヒザシ
3・(夏月視点)
「明日はよろしくお願いします」
胸を借りるつもりで頑張らせて頂きます。
持ってきた果たし状を萩尾先輩に渡し、慇懃無礼に挨拶をする教良木。
(よく言うよ。本当に)
とりあえず一緒に頭を下げながら、横に居る今年度中等部剣道部主将がそんなしおらしいタマではないことをよく知っている俺は、心の中で毒づいた。
『前田に剣道で負ける気しねーわ』
入部そうそう、そう俺に言い放った教良木の不敵な笑みを思い出す。
俺だって小2から剣道を始め、そこそこ大会で優勝などする身だったから、ほぼ初対面だった教良木の言葉は少々カチンとくるものがあった。
「だったら証明して見せろよ」
売り言葉に買い言葉。その場で俺達は試合することになったのだが…
確かに、コイツは強かった。
何回やっても一本も取れない。
全力を出しても完膚なきまでに負かされる。
そんなことは生まれて初めてで。
嬉しくて、しょうがない。
泣き虫だった昔、剣道は身体を鍛えるためのものだった。
弱かった昔、剣道は強くなるための手段だった。
そして今。
初めて現れた強敵に勝つためにやる剣道は
純粋に楽しい。
何かの手段としてではない剣道が。
(だから、やるからには、例え年上だろうと、負けないですよ)
兄貴も見に来ることだし。
「果たし状、確かに受け取ったよ。明日はこちらこそよろしくね」
にこにこと人の良い笑みを浮かべる眼前の萩尾先輩を見ながら俺は心の中で呟いた。

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