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ハルノヒザシ

ちょうど昼飯時の店内。
人混みの中でどうにかこうにか席を確保した俺達は、ようやく席に座って一息ついていた。
「ふー、やっと飯にありつける」
がさがさと包み紙を開きながら、三好が心底疲れたように息を吐く。
三好にとっては数時間本屋で立ち読みすることより、十数分人混みの中で揉まれる事の方がよほどこたえるらしい。
「食堂も毎日こんな感じなんだろうね」
多分な、と俺の言葉にハンバーガーを頬張りながら三好が頷いた時、店内の雑音に混じって、ピロリンという聞いたことがある電子音。
何だろうと、音のした方に視線を向けると数人の同年代くらいの女の子達の姿があった。
(あーん、上手く撮れなかったー)と携帯を見ながら言ってる所を見て、さっきの音は携帯カメラのシャッター音だったことに気付く。
(あ、どうしよう)
盗撮ってよくないよな。
彼女達が三好を盗撮しようとしていることに気付いた俺は、どうしたものかと視線を泳がす。
「ほっとけよ前田」
そんな彼女達にも、そして俺にもとっくに気付いていたらしい三好が、ズーッとジュースを一口飲んで、一言そう言った。
「外見だけ見るやつには何もわからないさ」
ポテトをつまみながら、達観した表情を浮かべる三好。
「そ、う…?」
「そ」
それだけ言うと、チラリと三好は彼女達を見た。
冴えた、冷たい、鋭い視線。
目は口ほどにものを言う、と言うが
三好のその眼差しは携帯を弄りながらおしゃべりを続けていた彼女達を黙らせるには
充分過ぎるほど
冷ややかな視線だった。


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あきゅろす。
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