ハルノヒザシ 7 ギッと、音を立ててベッドのスプリングが沈む。 「…?」 起き上がろうとした俺は、無言のまま枕元に、俺に背を向けて腰かけた三好の背中を見つめた。 「あのさぁ、前田…」 「なに…?三好」 「俺、見ちゃったよ」 お前は隠したかったかもしれないけど。 ぼそり、ぼそり、と後ろ向きのまま三好が言う。 「うん…」 予想はしていた。 俺はすぐ隠したつもりだったけど、後ろの席の三好には見られていたって何ら不思議ではない。 それより何よりまず俺の鞄を持って来てくれている時点で、俺の机の中を見ている可能性は高かったから。 「前田さぁ、知ってる?」 「…なにを?」 「お前寝てるときめちゃくちゃうなされてるのを」 昨日も、さっきも…。 「……嫌な、夢見てて…」 なるべく見た夢の内容は思い出さないようにしながら、俺は答える。 「あとさぁ、前田、頭痛くない?」 「あ、うん…ちょっと…」 後頭部がズキズキと熱を持ったように鈍く痛い。 「やっぱり。もろにぶつけたもんな」 ギシッと微かにスプリングを軋ませながら、三好が腰を捻って身体をこちらに向けた。 コブになってるな、と言いながら刺激しないように俺の頭をさする。 「ねぇ、前田」 「な、に、三好」 「お前は俺に言いたくないのかもしれないけど」 やっぱり、俺、お前が心配でたまらないよ。 そう言った三好は、少しだけ笑ってた。 でも、決してその顔は楽しそうなものではなくて 見てるこっちが痛々しくなるくらい。 悲しい悲しい笑顔を浮かべていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |