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ハルノヒザシ
10
ふーっと、溜め息をつく音がした。
思いっきり、呆れたように。

「お前はオポッサムか?」
もしくは熊に鉢合わせした人間か?

唐突に匂宮先輩の声がした。
お、オポッサム?
思わず俺は、ぱちっと閉じていた目を開く。
「え、あ、何ですか?それ…」
「何か襲われると死に真似する動物」
「はぁ…、で何で俺が…」
「襲われるとアホみたいに硬直するから」
そう言いながら、匂宮先輩はパッと俺の顎から手をはなす。
「嫌だったら抵抗しろ、抵抗。逃げる努力ぐらいしろよ。なんで間抜け面して固まるんだ、馬鹿かお前は」
熊の前で死んだふりしても結局食べられるだけなんだぞ。
心底呆れたような目で、俺を見ながら匂宮先輩がいう。
「だいたい何でわざわざ部屋までのこのこやって来るんだ。何かされるとかは思わないのか」
そこまで考えられないほど能天気なのか。
それとも俺をなめきってるのか。

どうなんだよ、前田春日。

なんでお前はそうなんだ?

「それとも犯してほしいのか?」

人を信用すると
人を疑わないと

どういう結果が待ってるか
お前の身体に教えこんでやろうか。

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