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ハルノヒザシ

スッと誰かが柱の影から姿を現し、ゆっくりと俺たちの方に近付いてくる。
徐々に自動販売機の明かりに照らし出されるその人の顔。
「…ぁ、…のせ、んはっ…」
「平野…」
声にならない俺の声の代わりに、望月先輩がその人の名を低い声で呟く。
今年の風紀委員会副委員長であるその人の名を…
(今の聞かれてた…?)
風紀委員に聞かれてたら一瞬アウトな会話。
いや、聞かれてなくても靴を持ったままの俺、後ろの開いたままの窓を見れば一瞬で察しはつくだろう。
さっき望月先輩に見つかった時、いやそれ以上の早さで俺の心臓が高鳴りだす。
(うわー、こんなことなら後5分早く帰ってくるべきだった)
後悔しても後の祭だけど…
その場に俺は立ち尽くすことしかできない。
「んー望月、それに前田じゃねーか。何してんのこんな暗い所で。待ち合わせ?逢い引き?それともラブシーンの途中だった?」
「ま、そんなとこだよ」
「ふふ、いーな。俺も混ぜてよ」
「嫌だよ、前田は俺のだ」
本気なのか、冗談なのか、びっくりする程普通に会話する二人。
横で聞いてる俺は、その会話がまるで俺の罪状を決める裁判官達の会話のように聞こえた。


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あきゅろす。
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