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ハルノヒザシ

「よし!できた!」
胴着と対座すること一時間。
ようやく作業が終わり、バッと胴着を広げた。
「おーすごーい!全然目立たない!」
流石兄貴!と夏が感心したような顔をする。
「縫った跡は破けやすいと思うから気をつけてね」
手早く胴着を畳み、夏に渡しながら念を押しておく。
これ以上破かれたら流石に直せない。
「わかった、わかった、気を付けます。ありがとう!」
「どういたしまして」
他には繕うものないか?と聞くとボタンが取れたと言ってシャツを一枚渡された。
あぁ、本当だ。胸元のボタンが取れてる。
ボタンを無くしたというので、適当なボタンを手早くつけてやる。
本当は、ボタンつけぐらい自分でやらせた方がいいのだろうけど、夏にやらせたら多分無茶苦茶なことになるのがわかっているのでついついやってしまう。
「はい。できた」
「ん、ありがとう」
「他にやってほしいことある?」
「今んとこ平気です」
そうか。じゃあ帰るかな。洗濯物干してきたし。
じゃあ、またね、と俺は立ち上がり夏の部屋を後にすることにした。
「じゃあな。夏」
「ありがと、兄貴」
部屋の玄関まで見送りに来てくれた夏に、軽く手をふり、俺はドアに手を伸ばす。
と、その時
スッと横から手が延びてきてドアに手をついた。
開きかけたドアがカチャリと閉じる。

「…約束、忘れないでね」

うなじに夏の吐息を感じる。
「わかって、るよ」
俺は、すぐ前のドアを見つめたまま小さく頷いた。

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