ハルノヒザシ 2 「ご馳走さまでした!」 三杯のご飯を平らげ、すっかりご飯を空にし、食べるものが無くなった所で、ようやく夏は茶碗を置いた。 食べるのも早く、そんなに食べておいて食べ終わるのは俺とほぼ同じだ。 いや、 俺が遅いだけかもしれないけど…。 「相変わらず食うなー、弟君。前田にも見習わせたいくらいだ。なんせこの間計った時の体重が…」 「みーよーしー!!余計な事を言うな!ほら、夏。髪切るからこれ被れ!」 既に食べ終わり、コーヒーを飲んでいた三好の言葉に夏が反応する前に、俺は髪切る用のビニールのカバーを夏に被せる。 「兄貴、体重…」 「はい、そっち座って!後ろ向け!」 何事か言いたそうな夏の背中を押し、新聞紙の上に座らせる。 だってさー、体重のことになると何か言われるの目に見えてるし。 太らないんだってば!俺は。 「…まさかまだ50も無いんじゃ…」 「うーん、四月に切ったばっかりだからそんな伸びてないな…。今日はいつもより短く切る?いつもみたいに切るとあんま変わらないよ?多分…」 座っている夏の後ろに膝立ちし、櫛で髪をとかしながら俺は言う。 もちろん体重に関する夏の言葉はシカトして。 「やだ。いつもみたいに切る」 「わかった、わかった。じゃ、動くなよ」 ま、確かにいつもより短く切るとかなり短くなるしな。 ご注文通りいつも通りで行こう。 そう思いながら鋏を取り出し、一度だけ確かめるようにシャキンと鳴らしてから、切り始める。 [*前へ][次へ#] [戻る] |