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ハルノヒザシ

感じる温もり。
正面に回される腕。
誰かに後ろから抱き寄せられたんだと理解するのに、しばらくかかった。
誰?だれ?誰だよ!
頭の中は大パニックなのに、身体は硬直したまま動かない。
そんな俺の身体に誰かの腕がますます強く絡みついて来る。
その時ふわりと香るかいだことのある匂い。
「びゃく、だん……?」
思わず俺は確かめるようにその香りの名を口にする。
ああ、この香りは…。
ゆるゆると硬直していた身体から力が抜けて行く。
「夏…。お前か?」
「ピンポーン。久しぶりだね。兄貴」
パッと腕が離され振り返れば、すぐ後ろにへらへらと笑っている夏が立っていた。部活中に抜けて来たのだろう、胴着姿で裸足だ。
「いい匂いでしょ。胴着洗ったからー。やっぱ、香は白檀がいいよねー」
師匠もいつも焚いてたしー、と夏は再度正面から俺に抱きつきながら言う。
「本当だ。偉いね。夏」
いつも俺が洗ってやってたのにな。夏も成長したもんだ。
「でしょ!今度遠征だから弁当作ってね」
「ああ、任せとけ」
やったー!と顔を綻ばせて笑う夏。
しかし、次の瞬間夏はすぐにその表情を引っ込めた。無邪気に笑っていた顔が一転、無表情に変わる。

「んで、兄貴。何でこんなところ居るの?」

真っ直ぐ俺の目を見て、1トーン下げた声。
やや、夏がご機嫌斜めだ。
直ぐ様それを感じ取った俺は、さて、どうしたもんかな?と視線を少し泳がせる。原因は間違いなくくるみちゃんだろう。いつからいたんだろうな、夏は…。
まぁ、俺今日は大したことしてないしな。堂々としてよう。


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