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ハルノヒザシ
16
「よし、じゃあ三好。とっとと服着て、頭を乾かす!風邪ひくよ」
そして頭濡れたままでいると禿げるよ、と前田が俺の背中を軽く叩いた。
スッと前田が離れて行く。
俺がゆるゆると後ろを振り替えるといつものように笑ってる前田の笑顔。
思わず俺も笑い返してしまうような…。
「マジで?禿げんの?」
「なんか頭皮は冷やすとよく無いんだってどこかで聞いた記憶が…」
俺の言葉に真面目に首をかしげながら前田が答える。
あ、あながち冗談でも無いわけね。んじゃとっとと乾かしてこねーと。
手早く服を着込みながら、俺はスタスタと洗面所に向かう。

ああ、前田。この間はお前の純粋さを、優しさを、責めてすまなかった。
俺は誰よりも今、お前の純粋さや優しさに救われているのに。
そしてまた、誰かがその純粋さに、優しさに救われるはずなのに。風間しかり、匂宮しかり。
いくら危険だからと言って、前田に惹かれるのを止められる訳が無いんだ。
また、そいつもただ救われたがってるだけなのかもしれないのだから。
俺に前田責め、止めさせる権利は無いんだ。
だから、前田。お前はそのままでいいよ。
もし誰かが善意や好意につけこんで、災厄が振りかかってきた場合は俺の全身全霊をもって払ってやる。
いくら情けなくなろうとも
俺の力の続く限り


俺は鏡に写る自分を見ながら、そんな思いを胸中で呟いた。


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