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ハルノヒザシ
14
すーっと俺は背中の傷跡を指でなぞった。
縦横するその傷跡は黒い中に白く走り、そのアトを分けている。
その刻まれている一本、一本を壊れ物を扱うかのように丁寧になぞっていく。
「わ、くすぐった。何か前田、触り方エロい」
「え、マジ?ごめん」
そんなつもりはないんだけどな。
耐えきれないようにククっと声を上げて笑い出す三好。
俺は思わず手を離す。
「…んで、どう?間近で見たご感想は?」
気持ち悪いでしょ?と三好は振り返らないまま、明らかな皮肉と自虐をこめた声で問う。
「いや、綺麗だと思う」
一瞬の沈黙。
「他には?」
「んー、痛そう、かな」
「ああ、そう…痛そう、ね」
「うん。それだけ」
そう言って俺は、ぴとりと三好の背中に抱きついた。
まだ濡れてる三好の髪が、俺の顔をくすぐる。
「…ま、えだ…?」
「そういうことだから、俺は全然気にしてないよ。いや最初は確かに気になったけどね。綺麗だから」
何だかあやすような口調になってきてしまう。
「悪魔?憎しみ?苦しみ?そんなこと感じないよ。俺は。こんなに近くにいるのに。俺が感じるのは、楽しいとか面白いとかそんなのばっか」
俺の中での三好はね、全然悪魔何かじゃないんだよ。
いつもクールで大人っぽくて、時々はパニクったりして、でも優しくて。
うん。そんな感じ。
いくら過去になにがあろうとも、今俺の目の前にいる三好はそんな感じ。

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あきゅろす。
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