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ハルノヒザシ
13
「俺の名前は三好十夜。俺の正体は地獄を紡ぐ悪魔。俺の前にはただ憎しみがあり、俺の後ろにはただ苦しみが残る。俺の前に立つものは一切の希望を失い、深い絶望を味わう」
すらすらと詩を朗読するように三好が言った。
言い終わった後、「ああ、ちょっとカッコつけ過ぎた?」とちょっとだけその笑みに自虐めいたものをのせる。
「うん。でもまぁそんな感じかな。間違ったことは言ってない」
俺の過去について、間違ったことは言ってない。
確かめるように、三好はもう一度繰り返した。

その顔はまだ笑っていたけど
微かに悲しみのような、憂いのような色を少しだけ滲み上がらせていて
俺は三好の笑顔が、明るい声が、何かを隠していることを感じとった。
見せるのが本当は嫌なはずのアトをわざわざ見せるのも
その綺麗な綺麗な微笑みも

何かを隠すための鎧なんだね。きっと。

「ね、三好…」
「なに?前田」
俺の言葉に三好が笑って答える。

「背中、もっとよく見せて」

俺の言葉に一瞬驚いたように三好は目を見開いた。が、すぐに笑って俺に背中を向ける。
俺の目の前に広がるそのアト。
これ以上ないくらい不気味さや妖しさをたたえているはずなのに、やっぱりすごく綺麗に見える。
「触ってもいい?」
「お好きにどうぞ」
まじまじと見た後に、俺がそう言うと三好は二つ返事で承諾してくれた。
俺は恐る恐るそのアトに手を伸ばす。

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