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ハルノヒザシ

「ああー、もう出るのー」
「点検が始まるからな」
風呂から上がり、スタスタと歩いて行ってしまう三好。
もうちょっと入っていたかったなー。
後ろ髪を引かれながら俺はゆっくりとお湯から上がって三好の後を追う。
まぁ、いっかー。楽しみにすることが一つ出来たし。
風呂から出ると脱衣所との適度な温度差を肌に心地よく感じながら、ゴシゴシとタオルで全身を拭いていく。
「今、何時だ」
「十時四五分」
頭を拭きながら目を細めて時計を睨む三好に俺はそう答える。
「結構目悪いな。お前」
「勉強好きだから」
「よく言うよ。前髪伸ばすのは目に悪いんだぞ。切ってやるよ、俺が。パッツンに」
「遠慮しとく」
遠慮するなよ、冗談だから。俺は意外と上手いんだよ。夏で散々練習したから。
「そうか。まぁ、いつかな…」
そう言い残し三好は頭を拭きながら鏡の方に行ってしまう。
惜しい、また練習出来そうだったのに!
残念そうに三好を見送ると嫌でもその背中に目がいった。
タンクトップから出た首から肩にかけて大きく黒く浮かび上がる刺青。
半袖では多分被いきれないその痕。
ぐちゃぐちゃな前側に比べて背中側は二、三つの傷が入っているだけで、比較的原型を保っている。
そのまま見入っているのは余りに失礼なので俺はすぐに目を反らした。
しかし、反らした後も目に焼き付くように残る三好の身体に浮かぶそのアト。
さっきははしゃいでで全然気にもしなかったけど。
明るい所でその背中のアトを改めて見て非常に不謹慎ながら思った。

ああ、綺麗だなって…。

黒を基調に赤と青で彩られたそのアトは怪しげな模様を浮かびあがらせ、危なげな美しさをたたえていたから。

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