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ハルノヒザシ

「うっわ、広いー」
風呂から上る湯気で曇る浴場内。
その中に響くややはしゃいだ俺の声。
呆れたように俺を一瞥し、とっとと洗い場に向かう三好。
キョロキョロと一通り浴場内を見渡した後三好の横に並ぶ俺。
この学校では当たり前に起きるはずのこの状況。
なのに俺には余りに初めて過ぎる。
さてえーと、シャワーはここを捻ればいいのかな。何か変な作りだな。使い方がよくわからん。
「あ!やべっ!!」
「冷たっ!!バカ、前田何すんだ!」
適当な場所を捻ると、意外と強い勢いで出てきた水が三好にまでかかる。
「ごめんごめん!いや、シャワーが…」
「壊れてんじゃねーの。よく壊れんだよ。ここの古いからさ」
うわ、怖いな。大浴場って…。 ハズレがあるのか。
仕方なく俺はズルズルと椅子を引き、隣に移る。
おお、今度は大丈夫だ。
早く湯船に入ってみたい俺は、いそいそと身体を洗う。

「俺先に湯船いくから」
ざーざーと身体を流していると後ろから三好の声。
はいはい、と返事をしながら顔を上げると後ろに立っていた三好と鏡越しにスタスタと三好が歩いて行くのが見える。
早いなー。そういやいつもめちゃくちゃ出てくるの早いもんな。
烏の行水とはこのことだ、と俺は自分の手際の悪さを棚に上げながらまたまたくだらない事を考える。
あー、なんか微妙にテンション高いな、俺。

でも…
ずっと逃げて来た場所がこんなにも楽しいとは思わなかった。
いや、でも当たり前か。
ずっと憧れていた場所でもあるのだから…。

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