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ハルノヒザシ

俺が一塁を駆け抜けた次の瞬間、バスっと言うファーストのグローブにボールが収まる音。
「セーフ!」
後ろから聞こえて来る声に俺はほっと胸を撫で下ろした。
ホームから聞こえて来る歓声。
そちらににっこりと笑いかけてから、次の打者の動向を見守った。
次の打者は体育委員の音羽君。
不敵な笑みをたたえて相手のピッチャーと対峙する。
ピッチャーの投げた球が音羽君のバットに勢いよく打ち返されたのを確認して、俺は走り出した。
「回れ回れー!!」
ホームの指示通り、俺は二塁を蹴り三塁を目指す、そしてそのまま本塁へ…。
うわー、相手のキャッチャーが怖いー!
ボールが前方が飛んで来るのとほとんど同時に俺はホームへと突っ込んだ。

「セーフ!!」

その声と共に大きな歓声が上がる。
「よっしゃー、前田偉い!!」
「マジで、足早いなー。今ので帰って来るなんて…」
「先制点だ!このまま勝つぞー!」
よくやった、とクラスの皆にバンバン背中を叩かれながら俺は打順の一番最後へと戻る。
はぁ、喜んでもらえるようで何よりだ。
あとしばらくはのんびり出来るし…。 終われば昼休みだし…。 そんな事を思いながらぼーっと試合を見守っているとカーンと言う小気味良い音。
目の前を駆け抜け行く音羽君。
再びクラスのみんなの歓声。
笑顔で戻って来る音羽君が俺に抱きついて来た。
「前田ー、やったなー!」
「音羽君のお陰だよ」
「君付けは止めろって言ってんだろ」
あっそうだった…。
「この調子で今回も勝とうぜ。あ、そうだ、前田。この試合が終わったらちょっと頼みたい事があるんだけどいいか?」
俺から身体を離しながら音羽君、いや音羽が言う。
なんだろう…?

「別にいいけど…」
ちょっと疑問に思いながら俺は頷いた。

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